酒に酔うほど

涼「今年から3年ですね」
芹「ああ、そういえばそうだな」
臣「今年も新しいサークル参加者はいない、か」
芹「いや、今年はサークルの募集はしてないんだ」
眞「…麻雀卓は1つしかないしな。考えてみればこの人数がベストなんだろう」
麻雀は基本的に4人。
そして代打ちが2、3人いればちょうどいい具合になる。
潤「…3年ということは全員20歳になったってことか」
茜「そういや成人式には行っとらんかったな」
眞「じゃあ全員で成人式も兼ねて進学祝いでもやるか?」
涼「…女子達はどうする?」
梨「別にいいわよ」
美「私もいいです」
潤子「別にいいけど」
芹「じゃあ全員参加って事で。この半荘が終わったら行こうか」

麻雀は終わり(ちなみに最下位は潤)、全員で大学に近い居酒屋に移動した。

全員の手に生ジョッキが行き渡る。
芹「じゃあ、みんな成人、そして進学おめでとうということで乾杯!」
全員「乾杯!」
眞「おかわり」
全員−眞「早っ!」

翌日。
涼「よう」
臣「お、昨日はどうだった?」
涼「いやあ、色々とあったな。あ、眞一郎」
眞「何の話してんだ?」
涼「んー、昨日の話をしようとしたんだけどさ。眞一郎は昨日の飲み会の後は?」
眞「ああ、美夏と一緒に帰ったんだけどさ、美夏のやつ、変なんだ」
臣「変、というと?」
眞「普段は腕とか組まないのにやたらと組んでくるんだ。しかも昨日はやたらとくっつきたがったな」
臣「くっつく…」
眞「単純に俺の腕に身体ごとくっついてきただけだ。下ネタじゃねえよ」
涼「…確かに変だな。美夏さんはそんな事はしないはずだ」
眞「だろ。原因は酒なのはわかってるけどさ」
臣「梨花は…んー…」
涼「なんだ、変化なかったのか?」
臣「いや変化がなかったというか…一緒に帰ってさ、梨花が気持ち悪くなったんだけど、『吐いちまえよ』って言ったら『やだ』って言ってきたけど、あまりにも気持ち悪そうだからさ、つい…」
涼「………つい?」
臣「手ぇ突っ込んで強引に吐かせた」
眞「…殴られなかったか?」
臣「いや、吐き終わった途端に泣き出してな。『見られたくなかった』って言うし」
眞「そりゃそうだろう」
臣「…正直なトコロ…ちょっとかわいかった」
涼「うーん、二人とも結構酒で性格が変わるみたいだな」
眞「そういや潤子は?あいつも酒飲んだんだろ?」
涼「んー…潤子さんは特に変わらなかったな」
臣「そうか。ガラッと変わりそうな気もしたんだけどな」

そう、臣の言う通りだった。
あまりにも変化しすぎたため、言うのはやめた。
時間は飲み会が終わった時へと戻る。

涼「潤子さん、帰りはどうする?」
潤子「…涼君の家に泊まってもいい?」
もうすっかり暗くなってるし、さすがに一人で帰るのは少々危ないかもしれない。
涼「別にいいよ。なんなら俺のベッド使ってもいいし」

というわけで自宅に到着。
バタン、と玄関のドアを閉めた瞬間、
ぎゅっ。
潤子が抱きついてきた。
涼「じゅ、潤子さん?」
潤子「涼君♪」
涼君♪…て。
すりすりと顔を胸元にすりつける。
…酔っ払ってる。
いやもうすでに酔っ払ってるのだが誰もいなくなったことで理性のタガが外れたようだ。
猫。
ぱっと見の印象は猫だった。
普段はなつく事はないがたまにすりすりと甘えてくる。
まさにそれだった。
酔っ払うとまさかこうなるとは…。
潤子「ね・え、りょうくん♪」
涼「え」
潤子「…ちゅーして」

この言葉を聞いた瞬間、大爆笑した。
無論、心の中で。

ぶははははは!
『ちゅー』だってよ!『ちゅー』!
潤子さんが『ちゅー』だってよ!
ぶはははははは!

実際に笑うと機嫌を損ねて潤子パンチの嵐になりかねない。ていうかなる。
…問題は潤子曰く『ちゅー』するかどうかだ。
据え膳食わぬは男の恥とは言うが、はいそうですかと従うわけにはいかない。
したら間違いなく調子にのるからだ。
涼「ま、まあまあ潤子さんとりあえず落ち着いて」
潤子「うー、ちゅーしたいのに…」
冷蔵庫から買っておいた缶ビールを取り出し、ぷしゅっと蓋を開ける。
涼「まあとりあえず一本どうぞ」
潤子「…これ飲んだらちゅーするからね」
…何が何でも『ちゅー』する気か。
だが、させない方法がある。
涼「あっ!」
横の方を向いて声を出す。
潤子「ん?」
それにつられて潤子は横へ向く。
今だ。
『あるモノ』を取り出し、その容器に入ってる液体を潤子の持っているビールの中に数滴入れる。
潤子「…何もないじゃない〜。りょうくんのばかぁ」
普段なら絶対に使わない、甘えた怒り方をしてくる。
潤子「これ飲んだらちゅーするからね…」
ぐいっ、と缶ビール一気飲み。
女なのに男らしい飲みっぷりだ。
飲み干した瞬間、潤子の手から缶ビールが落ちる。
カーンという音を立てて床に転がる。
完全に飲み干したらしく、中身がこぼれる事はなかった。
一方、潤子はふらふらと身体が揺れている。
その揺れは大きくなり、倒れようとしていた。
すかさず潤子を抱きとめる。
潤子「……すー…すー…」
潤子は寝ていた。
…効果はあったようだ。
缶ビールに入れたのは目薬。
酒に目薬を入れると簡単に眠ってしまうと聞いた事があるがまさかこんな簡単に寝てくれるとは。
涼「…とんでもない酒グセだな」
正確には俺だけにしかしてこないであろう酒グセなんだろうけど。
…もし男のプライドを捨てて潤子曰く『ちゅー』していたらどうなっていたのやら。
んー………。

※潤子の台詞のみです。
『んー…もっとぉ…もっとしてぇ…』
『んんっ…そこぉっ…♪』
『やぁなの…私がするんだからぁ…』
『終わっちゃやだぁ…もっとしたいよぉ…』

…アリっちゃアリだが男の面目丸潰れかも…。

後書き

今回のタイトルは国生さゆりから。
今回のタイトルは藤圭子から。
書いてる時期と掲載される時期とでは大幅に違う時がありますが時々今回みたいに妙なモノになっていたら『夏に書いたな』と思っていただいていいです(笑)。
今回は結構前から考えていたのですがラストの潤子の台詞のみの部分は夏真っ盛りの時に書いたやつです。しかも即興で(笑)。
見直してみても壊れてんなぁと思います。
暑くて脳ミソが軽く溶けてたようです(笑)。
今までのもそうですが今後もどこか壊れたネタ及び文章があれば夏に書いたであろうと思っていいです。大半は当たってると思います。
それでは次回にて。