i feel 後編

光一君と春香が仲良くなって2ヶ月が経った時、
涼「光一君の家が、引越し?」
春「はい。せんせいが言ってました」
綾「せっかく仲良しになれたのに……」
春「?……」
春香は引越しの意味が理解していない。
春「『ひっこし』って何ですか?」
言いたくなかった。
だが、言わねばならない。
春香にとって過酷と言える説明を。
涼「春香、引越しっていうのは……どこかへ行ってしまうことなんだ」
春「どこかへ…?」
涼「そう、つまり………」
次の言葉が出ない。
次の言葉で、春香が泣いてしまいそうでしょうがなかった。
涼「…………もう、光一君に会えないんだ」
この言葉を聞いた瞬間、春香の顔が変わった。
春「会えないって………どうしてですか!?」
涼「……光一君のご両親の問題なんだ」
春「そんな……もう会えないの…?」
言葉が震えている。
春香の瞳には涙がじわりと浮かんでいる。
何も言わず、うなづいた。
これ以上、言いたくなかった。
だが、この行動はとどめの一撃として十分だった。
春香の瞳から涙がこぼれる。
ぼろぼろと、とめどなく流れ落ちてくる。
これ以上見ていられなかった。
春香をぎゅっと抱いた。
春「うっ……く……ふぇ…ん……ふっ…く……」
嗚咽が漏れる。
涼「春香……」
止める術がなかった。
この子の、涙を。

翌日から、光一君は保育園にはいなかった。
おそらく引越しのためだろう。

そしてその日の夜。
涼「春香、光一君の家の引越しは、いつだい?」
春「………明日、です」
春香の表情には明るさがなかった。
涼「……春香、光一君にさよならは?」
春「…………言ってないです」
涼「そのままで、いいの?」
春「………」
涼「光一君だって、春香に会えなくて辛いんだよ?それに明日、言えなかったらずっと後悔する事になる」
春「……」
春香の瞳から涙がこぼれる。
春「いやだよ………会えないなんていやだよぉ………」
涼「……じゃあ、明日。光一君に会おう」
春「…はい……」
春香はこくんとうなづいた

翌日
駅のホームにて。
涼「そうでしたか……北海道へ…」
光一の父「ええ。転勤でどうしても行かざるを得ない状況で…」
綾「光一君も……」
光一の母「はい、お宅の春香ちゃんにはかわいそうですが…」
春「…………」
春香は何も言わなかった。
いや、言えないのだろう。
涼「春香……」
その時、発車のベルが鳴った。
時間だ。
光一の父「さ、行こうか」
光一君の両親が新幹線に乗りこんだ。
そして光一君も乗りこもうとした時だった。
春「まって!光一くん!」
春香が飛び出す。
そして光一君の前に。
そっと、光一君の左頬にキスをした。
春「……わすれないから、ぜったい。光一くんのこと」
光一君はうなづいた。

新幹線が動き出す。
ゆっくり、ゆっくり。
そして新幹線はホームから消えた。
春香は泣いていた。
ただ、昨日の涙とは違う。
春香の顔はすっきりとしていた。
自分の言葉を言えたのだから。
涼「……きっといつか、会えるさ」
春「…はい」
春香はにこっと笑った。

後書き

さて、彩としては初の前後編となります。
この話の元となったのはビートマニアUDX7thstyleの『HAPPY WEDDING』から。
曲そのものが幸せそうでしたし、まあ………絵も(笑)。
実はこの話には続きがあったのですが、それは彩の時代からさらに後になります。
………もう、おわかりになりましたね?
まあそれは皆さんのご想像にまかせるとしましょう。
それでは次回にて。