「浩二さんっ!!」
由香は目に涙を浮かべ降りしきる雪の中、愛する男の名を叫んだ。
「あぁ!?」
振り向き様、浩二は何故か身も蓋もない一言を発する。どうして、そんな……。
由香は愕然とする。
(でも、私が悪いんだもの……。拒絶されても仕方ないわ……)
「……」
浩二は先ほどの一言を言ったきり、何も言わない。
(せめて、何か言って…。罵声でもいい…、あなたの声が聞きたい)
切実な思い、込み上げる想い。
自分がしたことを思えば、それは酷く身勝手だと思った。
でも……、私は……。
浩二は無表情のまま、背中を向ける。
(ああ……行ってしまう……)
淡々と歩き出す浩二の背中。
燃えるような瞳でその姿を胸に焼き付ける。
そして。
姿は見えなくなった。
つぅっと頬を伝わる涙。
がくっと膝から崩れ落ちる。
「わぁぁぁぁぁぁ……!!」
顔をくしゃくしゃにし、無造作に手で覆う。
通りを行きかう人もなんのその。今の私にはただの芋だっ
もうどうでもいい…。
冷たい。
コートが濡れていき、体の熱を奪っていく。
でも、気にならない。それでいい。私の心はこの雪と同じ。
いっそ、この雪に同化して消えてしまいたい。
あぁ、浩二さ…
「おーい、由香。何やってんだ?」
「……へっ」
素っ頓狂な声を上げる由香。
浩二に似た人が後ろから走ってくる。
……えーと……?
「お前、そんなとこに座ってたらコート汚れるぞ。…ってなんだ、お前、その顔!? 鼻水ぐしゃぐしゃできちゃないぞ…。ほれ、ティッシュやるから拭け」
「あ、あれ?最近全然、会えなかったし、誕生日も私忘れちゃって、それで浩二怒って向こうに…」
ティッシュを受け取りながら、浩二が歩いていった先と浩二を見比べながらキョロキョロする。
「はぁ? 俺が怒る? 何のことだよ? 大体、西口で待ち合わせって言っただろ? こっちは東口だぜ?」
「え?」
「…お前、またコンタクトつけてないな…」
「だって、ドライアイで痛いんだもん…」
「ただでさえ、ど近眼で思い込み激しいんだから勘弁してくれ…」
ちゃんちゃん