三浦

『……どうする』
二史納が去り、4人になった。
5人ならば安心できたが、1人いないという事実が不安にさせる。
『…ねえ、二史納君を呼び止めれないかな?今からならまだ間に合うかも』
確かに三浦の言う通りだ。
確実に助かる方法はそれしかない。
『…そうだな。危険かもしれないがそれが確実だ』

4人全員で入口に着く。
幸いな事に殺人鬼はいなかった。
しかし、二史納もいなかった。
『…もう出ちまったかもしれないな』
『いや、まだ中にいるのかもしれないな、ほら』
四ノ宮は床に落ちていた帽子を拾う。
『これ、二史納君のだわ』
『こんな吹雪の中で帽子をかぶらないで行くのは危険だ。まだこの中にいると思う』
『…二手に別れるか?四ノ宮と三浦は建物の中、俺と六車は建物の周り』
『ああ、いいぜ』
『私もいいわ』

『とりあえずさっき来た通路に面した部屋を1つずつ見てみよう』
『うん』
先程の部屋に戻りつつ、その手前にあるいくつか存在している部屋を調べる事にした。
ドアを開け、中を覗く。
中は真っ暗だった。
『二史納』
声をかけるが反応はない。
…ここにはいない。
ドアを閉める。
『次だな』
三浦に声をかけるが、三浦はいなかった。
『…おい、三浦?』

三浦は逃げ込んだ部屋の前まで来ていた。
このすぐそばに壱原の死体があった。
しかし、今は死体がなくなっている。
…殺人鬼がわざわざ片付けたとは思えない。
では、二史納が片付けた可能性が高い。
壱原と二史納は比較的仲が良かったから、きっとどこかの部屋に置いた可能性がある。
となると、この通路の奥に二史納がいるはず。
通路の奥を歩いていく。
ふと、通路に面した扉を発見する。
そのドアはわずかに開いており、中から光が漏れている。
…誰かがいる可能性が高い。
殺人鬼がいるかもしれないが、いたらすぐに逃げよう。
見つかったら死ぬというわけではないはず。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開ける。
『……二史納君?』
そこにいたのは

ぶらん

                           ぶらん

大きい何かがぶらんぶらんと揺れている。
モノではない。
ヒトだ。
目を白く剥き、口からはだらだらと涎が出ている。
ズボンは股間から足元にかけて染みができている。
ズボンの隙間から、ぼとっ、ぼとっと糞と尿が落ちてきている。
そのヒトは、探していた二史納だった。
三浦「………あ…あ…」
声が出ない。
部屋から出ようとした時、肩をつかまれた。
その手は見えないが、得体のしれない雰囲気を持っていた。
知っている手ではない。
違う意味で知っている手だ。
つまさきから頭のてっぺんまで一気に恐怖が襲ってくる。
狂気に満ちた空間に、身体が崩壊を始める。
足元がびちゃびちゃと濡れはじめる。
尿を漏らした。
それだけではなく涙まで吹き出すように流れ出た。
『た……たす…けて…』

『三浦っ!三浦っ!どこにいるんだ!』
四ノ宮は三浦を探していた。
ほんの少し目を離したらいつの間にかいなくなっていたとは。
もしや殺人鬼に連れ去られたのだろうか?
あの一瞬で?
そんな神業ができるのだろうか?
それが本当なのかはわからないが、三浦がいない事は紛れもない事実だ。
廊下の角を曲がり、屋敷の一番奥へと続く、長い廊下に入る。
視界に何かが見える。
廊下の一番奥に誰かがいる。
殺人鬼か?
そう思ったが、違っていた。
三浦だ。
ぺたんと座っている。
『三浦、無事だったか』
声をかけても反応しない。
気絶しているのだろうか。
…という事はかなりショックな事があったはず。
……二史納が死んでいるのを見て気絶したのかもしれない。
とにかく起こさないと。
『おい、三浦…起きろって』
三浦の肩をゆする。

直後、三浦の首から上が、ごろんと転がり落ちた。
そのまま、ごろん、ごろんと床を転がり、やがて止まる。
気絶などしていなかった。
首をはねた後、わざと戻したのだ。
無事だったという束の間の幸せを送るために。
『三浦あああぁぁぁァァァッッ!』
吼えた。
吼えることしかできなかった。