……………遅いな。
一緒に寝ようとしたが、肝心の綾が来ない。
『後で行きます』って言ってたんだけどなあ…………。
ふと、戸の向こう側から足音がした。
お、来たか。
戸の前で足音が止まり、戸が開いた。
………が、いない。
あれ?と思って下の方を見ると………。
いた。
例の指輪をつけて子供になっていた。
……………おや?
なんでまた、子供なんかに………。
そんな事を考えているうちに、綾がベッドに入る。
入るというより潜り込むみたいな感じだったが。
涼「………なんでまた………子供になったんだ?」
綾「………」
綾は何も言わずに、ぽふ、とこちらに顔をうずめた。
……………ああ、そういう事か。
甘えたいのか。
幼少の頃は甘える事があまりなかったのだろう。
家が家だけにそういうのには縁がなかったと言うのだろうか。
子供になったのはおそらくそのままだとすごく恥ずかしいからなのだろう。
そうすれば甘える事ができる。
多分、綾はそう思ったのだろう。
何も言わずに頭をふわふわと撫でる。
わかってるよ。
そう思いつつ。
綾もそれを感じ取ったのか、きゅ、とパジャマの袖をつかむ。
………でも、綾はひとつ忘れている事がある。
元に戻るには心拍数を高める行為をしなければ元には戻らないという事を。
甘えたい一心で子供になったのだろうけれども。
ま、それは後でいい。
かわいい天使の願い事を叶えるのが俺の義務。
戻る時まで、彼女の願い事を叶え続けよう。
そっと彼女の髪のキスをした。