カシャン。
………………………
再びカシャン。
綾「…………………嘘……」
お風呂上りとは別の汗が出てきた。
足元にあるのは体重計。
そしてその体重計が出した数値は以前の3キロ増し。
綾「……………太………った………」
涼「どした?」
綾「きゃあっ!」
いつの間にか後ろに涼がいた。
綾「い、いつからそこにいたんですか!?」
涼「ん、ついさっきから。ずいぶんと体重計とにらめっこしていたけど」
綾「そ………それは………」
涼「…………………まあ、そういうことなんだろうけども………いくつ増し?」
綾「……さ………3キロです」
涼「………妙だな。太った風には見えないけど」
綾「でも、現に3キロも増えてるんですよ」
涼「だって、どう見ても…………」
どう見ても肉がついたように見えない。
何かしらの変化があってもいいのだが。
涼「変わってないと思うが………………………胸、触っていいか?」
綾「どっ、どうしてですかっ!?」
涼「外見上は何の変化もないし、あるとすれば胸、尻といった部分だな。ブラがきつくなったりとかは?
綾「それはありません」
涼「…………まあ、それもそうか。しょっちゅう触ってるし」
綾「…………はい」
しゅー、と湯気を出しつつ返事をする綾。
涼「………あとは…………隠れ肥満………はないな。綾は少食だし」
綾「……他に何かあるんでしょうか…………」
涼「……身長は?」
綾「…それもないですね。伸びているのなら見た目ですぐわかりますから」
涼「…………あとは体重計の目盛りがずれているかだな。もう一度計ってみたら?」
綾「……そうですね」
再び綾が体重計に乗る。
涼「…………んっ。待て」
綾「え?」
涼「わかった。3キロ増しの原因が」
綾「何ですか?」
涼「体重計のその下。畳だ」
綾「畳…………あっ」
畳の上で体重計を載せて計ると、通常よりも2、3キロ増えてしまう。
涼「畳のせいで3キロ増しになったんだな。でなければ納得がいかない」
綾「良かった………」
涼「……しかし、そんなに3キロ増しってのはそんなにショックかな」
綾「…ショックですよ」
綾がむっとした顔をする。
涼「……ま、太ることは綾がそんなカッコのままでいるって事をよく知ったよ」
綾「え………あ…」
風呂上りに計ったため、バスタオル以外は何もつけていない状況だった。
体重の事が気になっていてまったく格好の事を気にしていなかった。
涼「さてと、湯冷めしそうだから、もう一度入るといいよ」
綾「はい………」
顔だけでなく、全身を赤くしながら涼の発案を受け入れた。
涼「………そろそろ俺も入るかな」
綾「えっ!?」
涼「畳が原因でも、もしかするとほんの少しだけ太っているかもしれないからね」
綾「…………」
赤くなり過ぎて返事ができなくとも、こく、とうなづいた。
涼「お風呂で検査、そしてダイエットはその後で、ね」
ぽそっ、と綾にささやく。
もはやうなづく事すらできなくなる程真っ赤になっていた。