涼「………………」
俺はしばらく待った。
信「………その決意は固いのか?」
今まで聞いたことのない声だった。
今までに見たえじいさんが偽者のように感じるほど、厳格な印象があった。
綾「………」
綾さんは俺の方を見た。
涼「はい」
俺は、プロポーズをした後、残った障害はおじいさんだと思った。
このような金持ち関係、特に和風の家は、祖父が主導権を握っている。
それは綾さんの所とて例外ではなかった。
信「そうか……なら……、文句は言いまい…」
綾「…じゃあ」
信「うむ、結婚を認めよう」
涼「本当ですか」
俺は心の中でガッツポーズをとった。
ここまですんなりいくとは思わなかった。
そう思っていたのはおじいさんの次の言葉を聞くまでだった。
信「ただ、条件がある」
涼「条件?」
まさか、無茶な問題をふらせるのでは……。
信「心配せんでいい、友人の依頼をやってほしいのだ」
友人の依頼?
涼「その、依頼というのは?」
信「うむ、居間に座らせているので、一緒に話を聞こう」
居間に行くと、中年気味の男性がいた。
男性「こんにちは」
涼・綾「こんにちは」
俺と綾さん、そしておじいさんが席に座る。
信「まずは自己紹介だな。こちらはわしの孫の綾、そしてこちらはその恋人の涼君だ」
恋人。
その言葉にグサッときた。
依頼が解決するかしないかで婚約者と呼ばれるかどうか…か。
男性「僕は群馬県の甘楽に住む権田辰夫(ごんだ たつお)と申します」
信「わしの友人の息子さんじゃ」
辰夫「実は先日、父を亡くしました。事故で10年間寝たきりでした。自分で出来ることは息をする、まばたきぐらい……いわゆる植物人間でした」
涼「お気の毒に……」
辰夫「で…父が死ぬ1ヶ月前、父の72歳の誕生日に父をビデオで撮ったんです」
それが父親の最後の被写になるとは……。
辰夫「そして、父が死んだ後、偲んで、何度もそのVTRを見ました。そして、あることに気付いたんです」
綾「あること?」
辰夫「カメラを向けた時に異常にまばたきをするんです。それも規則的に」
涼「規則的?」
辰夫「目をつむる時間が長かったり短かったり……」
涼「そのビデオ、ありますか?」
辰夫「ええ、見せようと思って持ってきました」
ビデオを見てみた。
画面には寝ている老人の姿があった。
涼「この方がお父さんですね」
辰夫「そうです。見ててください」
確かに、まばたきを意識的にやっているように見える。
ん………これは……。
涼「……モールス信号」
辰夫「モールス信号?」
涼「ええ、ツー・トンの長点・短点の組み合わせで文字を現すんです」
辰夫「それで、何と言って?」
涼「いや……これは俺には……ん…おじいさんなら?」
友人がモールスを使えるということはおそらく軍人だ。
ここから群馬ではかなり遠い。
おそらく、おじいさんとは戦友なのだろう。
ならば、おじいさんなら。
涼「綾さん、おじいさんを」
綾「はい」
綾さんはおじいさんを呼びにいった。
辰夫「…だとしたら………親父は体は動けないが意識はずっとあったんですね」
涼「おそらくは……」
辰夫「何て……残酷な人生だ」
涼「お父さんはなぜ植物人間に?」
辰夫「落雷事故です」
辰夫さんの話によると、辰夫さんはお父さんの実父ではなく、養父だった。
小学生の時に養子として権田家にきた。
権田家は江戸時代から続く豪農だったが、子供がなく、辰夫さんが跡取りとしてもらわれた。
権田家は地主として以前は多くの小作人を抱えていたが、終戦時の農地改革で田畑は全部無くなり、今はわずかな畑を作って細々と暮らしている。
そして悲劇が起きた。
辰夫さんが中学生の時に、野良仕事中に落雷にあい、植物人間となってしまった。
その後、辰夫さんが面倒を見たが、先月帰らぬ人となった。
一通りの話を聞くとおじいさんが来た。
おそらく、わかるのだろう。
信「モールスか、なつかしいの」
涼「それじゃあ、このビデオを見てください」
ビデオを見せると、おじいさんの表情は重かった。
まさかこれが最後の映像になるとは……。
信「……綾、紙とペンを」
綾さんは紙とペンを取って、おじいさんに渡した。
涼「やはりモールス信号ですか?」
信「どうもそうらしい……最初から見せてくれ」
最初まで巻き戻して、最初から再生した。
信「…………コ………ノ………イ…………エ……………ハ…………」
辰夫「やはり父は意識が……………」
信「…マ………イ………ゾ……」
すると、画面は老人から、砂嵐に変わった。
信「これで、終わりか?」
辰夫「はい、ここまでしか録ってないんですけど天」
涼「ちょっと見せてください」
俺はメモを取る。
メモには『コ・ノ・イ・エ・ハ・ウ・ル・ナ・ト・ク・ガ・ワ・ノ・マ・イ・ゾ・ウ・キ・ン・ガ・カ・ク・サ・レ・テ・ア・ル・ド・ゾ・ウ・ニ』と書かれてあった。
一瞬、俺は立ち眩みを覚えた。
綾「何が書いてありますか?」
涼「………こりゃ、すごい……読むよ…驚かないように」
俺は深呼吸をして読み上げた。
涼「この家は売るな、徳川の埋蔵金が隠されてある、土蔵に………ここまでだ」
辰夫「徳川の……埋蔵金!?」
1週間後
綾「それじゃ行ってきます」
信「うむ、気をつけてな」
涼「辰夫さん、行きましょう」
辰夫「はい」
俺達は新幹線に乗り込んだ。
座席に座り一息ついた。
辰夫「…埋蔵金なんて……本当にあるんでしょうか?」
涼「死に向かおうとしている人間がわざわざモールス信号で嘘はつかないと思いますが……」
辰夫「でも父は衰弱して相当意識が混濁していたんじゃないでしょうか、だからありもしない夢のような事を……」
涼「信じてみましょう。お父さんのために」
俺はこの1週間で調べた情報をまとめたメモ帳を開く。
涼「じゃあ。ここで徳川の埋蔵金に関して調べたことを要約すると……」
一般に徳川の埋蔵金と言えば、赤城山中に隠したと言われる小栗忠訓の埋蔵金のことをいう。これは各文献が一致している。
もともとこの徳川の埋蔵金は徳川家康が残したとされる120万両に由来する。
これが江戸城の御金蔵(金庫)にしまいこまれたまま代々伝わった。
この家康の遺産を四代将軍家綱が分銅金(法馬)として永久保存することになった。小判を溶かして巨大な分銅金の金塊25個を造った。そしてこの分銅金には軍用以外に使用してはならない旨を刻み込んだ。
綾「その分銅金1個の重さは?」
涼「うーん、御金蔵金そのものがどれくらいあったのか諸説ふんぷんだが、千枚吹き法馬と記録されているから大判千枚分44貫、165キロぐらいだな」
辰夫「でもどうしてそんな塊に?」
涼「盗難防止さ、小判のままでは少しずつ抜き取られてしまう。けど、165キロの金塊だと大型力士の体重ぐらいだからちょっとやそっとの人数では運べない」
ところが、その分銅金は徳川幕府の財政難が続いて、八代吉宗の代までに15個がつぶされて貨幣に変えられた。
それを憂えた吉宗は享保の改革を行って倹約を重ね、新たに9個の分銅金を作ることに成功した。
そしてこれを御納戸金と改称して合計19個の金塊が江戸城の御金蔵に眠ることになる。
そして、1868年、西郷隆盛らを中心とする征東軍が江戸城を開城して御金蔵に踏み込んだ時、あるべき19個の分銅金はなくなっていた。つまり、ひそかに運び出されていた。
俺の調べた文献では1861年〜1863年まではあったと記録されているため、開城の68年までの5年間の間に外に持ち出されたことになる。
だいたいこの辺から金はどこかに埋められたという考えが出てくる。
そしてこの金を埋めたのが小栗忠順ということになる。
小栗上野介忠順(おぐりこうずのすけただまさ)は幕府の勘定奉行、今でいう大蔵大臣だ。
幕末、ときの大老井伊直弼は2人の男を呼んでひそかに会合を持った。
1人は腹心の林と、そして小栗。
当時の世界情勢から日本は開国をせまられ、開国すれば列強が次々とやってきて、新しい文化がどんどん流れ込んでくるだろう。
それにともなって日本の黄金は外国に流出する。それを防ぐには埋蔵以外にない、ということを話し合った。
だが、この時期に、尊王攘夷によって嵐が吹き込まれた。
急拠小栗上野介忠順は職を解かれ(実際は解かれていない)失意のうちに自分の所領地の上野国(群馬県)権田村にひきこもることになる。
もちろんこれは金塊を埋蔵するためのカモフラージュで小栗一行は7台の馬車に家財を積んで帰ったが、この7台に金塊が積み込まれていたのではないかという推測がある。
綾「小栗忠順のその後は?」
涼「処刑された。1868年3月ひきこもっていた権田村で倒幕の官軍によって処刑された」
処刑の理由は幕府の御納戸金をネコババしたという理由だが、これは官軍が小栗を処刑するためのデマだとされている。
しかし、小栗が御納戸金を埋蔵したということを信じていないわけじゃなかった。
おそらく官軍は小栗を捕まえて埋蔵金のありかを聞き出そうと色々拷問をかけたが、もちろん気骨の武士だった小栗が口を割るわけはない。
その結果、小栗は不名誉な罪状をつけられ、処刑された。
そして埋蔵金のありかは処刑によって謎となるが、とにかく江戸から群馬県の権田村に引きこもるまでの間に埋められたとされており、これもまた諸説ふんぷん。
涼「まあ、大体これが徳川埋蔵金の概要なんだ」
辰夫「そ、そしてその金塊がうちの家に?」
涼「そういうことになるわけだね」
そして、それを調べるために俺達は群馬県権田村へと向かうことになった。
電車で群馬県に着くと、今度は車で移動。
涼「この埋蔵金伝説にはまだ話があるけど、小栗が埋めたとされる場所は全部フェイントじゃないかと思うんだ?」
綾「じゃあ、小栗の動きは全部陽動なんですか?」
涼「そう、小栗の一行に目をひかせて本当の埋蔵金運搬グループは全然別のところにいた。例えば、辰夫さんの家とか」
辰夫「でも…そんなことまったく考えられないことです。私の家は武士でもなんでもない代々百姓の家だし、徳川家とは何の関係もありません。ただ、ふと思ったのは私の名字と小栗が処刑された権田村と同じ名前だということです」
涼「あっ!」
ちょっと待て、『権田家』と『権田村』だって?
辰夫「ど、どうかしましたか?」
涼「そういえばそうだ。それは何か関連がありそうだ」
明治になるまでは侍階級以外の人間は名字を持つことを許されていなかったが、明治維新後は一般の人間も名字をもらえるようになった。
その時、適当に名前をつけたらしい。
例えば、林のそばに住んでいるから『林』とか、古い川の所に住んでいるから古川とか。
涼「権田という名字をつけたのも小栗の処刑された権田村に何か関係のある人間かもしれない」
綾「じゃあ、もし権田さんの家にあった場合は?」
涼「おそらく、祖先は埋宝守りとしての役目をおおせつかった人間ということも考えられる」
辰夫「埋宝守り?」
つまり埋蔵金が盗掘されないように監視する人間だ。
涼「この埋宝守りは一子相伝という形でひそかに受け継がれる」
おさらく辰夫さんが権田家に呼ばれたのも埋宝守りの後継者を作りたかったのだろう。
綾「多分、辰夫さんのお父さんは機が熟したらそのことを伝えるつもりだったけど、落雷事故のためにこのことが伝えられなかった……」
辰夫「そういえば…父は土地や山などの資産が腐るほどあるのに決して売らず、近所づきあいもせずに質素な暮らし続けていました。それにことあるごとに口ぐせのように『俺達はこの家を離れてはいけない』と言っていました。もしかすると………本当にそうかもしれません」
そして権田家にたどり着く。
そしてそこにあるのは綾さんの家の倍はあろうかと思われる家、そして広大な山が広がっていた。
涼「これが……辰夫さんの家ですか」
辰夫「ええ、あの山のふもとからこっちの山の端まで一応うちの敷地ということになっています」
あの山からこっちの山…………東京ドームを4つ置いてもまだ余裕がありそうだ。
綾「これじゃあ、探すのも並大抵じゃないですね……」
涼「でもさ、綾さん。何となく武者ぶるいしてこない?この広大な屋敷のどこかに徳川の埋蔵金が隠されているんだ」
その頃、綾さんの家では。
信「無事に着いたかの………」
綾の母「大丈夫ですよ、お父さん」
2人とも茶を飲んでいた。
綾の母「ふふ……」
信「なんじゃ?」
綾の母「まさか依頼の内容が埋蔵金なんて……」
信「さすがにわしも驚いたわい、モールス信号からあんな文章が出るとは」
綾の母「もし、見つからなかったら、どうするんですか?」
信「まあ、依頼のビデオを解読できたのだ。文句はあるまい」
綾の母「ふふ……解読できなくても、結婚を許したんじゃありませんか?」
信「まあの……わしが認めた男じゃからな…」
綾の母「ふふっ、涼君が帰ってきたら私は『お母さん』って呼ばれるのか……、不思議な気分ね」
そして、権田家の方では。
涼「は…は、はくしょんっ!」
綾「ど、どうかしましたか?」
涼「ん…、いや、ただのくしゃみだよ」
誰か…噂してるのかな。
辰夫「これが我が家の大体の見取り図です」
辰夫さんがメモ用紙に書いて俺に渡してきた。
見取り図には、周りは林で覆われ、敷地の中に2つの岩、そのうちの1つである天狗岩には川が流れ、滝を作っている。もう一つは猿岩。
そして南の方に母屋と土蔵がある。
辰夫「北側は巨大な杉の木が約百本ぐらい立っていて、それが庭の境界線を作っているんです」
涼「なるほど…そして、庭の真ん中に川が流れていて岩山がある」
すごい家だな、庭に川が流れているとは………。
辰夫「ええ、でも広すぎて誰も管理していないから庭といってもただの『山の中』ですよ」
涼「とりあえず、見学させてください」
俺達は一通り地図の部分を見回った。
最初に見たのは天狗岩と呼ばれる大岩。
先端の部分が天狗の顔に似ているため、そういう名前がつけられたそうだ。
そして次に猿岩。
やはりその大岩も猿に似ているため、そういう名前がつけられた。
猿岩の所には、小さな穴があった。
その小さな穴は虎の形に似ていたため虎穴と呼ばれた。
そして敷地の北側に立っている杉の林。
樹齢は500年以上らしく、かなりの大きさだった。
そして、肝心の土蔵に着いた。
扉には鍵がついていて、鍵を開けると、まず最初の印象はカビ臭い。
辰夫さんの父が倒れてから10年間開けてないから、まあ当然か。
辰夫「父のモールス信号は『土蔵に』で終わっていましたね」
涼「つまり、この土蔵の中に埋蔵金のありかを示す何かがあると思う」
綾「でも…これは………大変ですね」
綾さんの言う通りだった。
この土蔵の広さは普通の家の大きさを持ち、高さは3メートルはあろうかと思われる高さだった。
涼「綾さん」
綾「はい、なんでしょうか」
涼「どのぐらい経った?」
綾「1週間ほどですね」
涼「やっと半分調べ終わったけど、まだ何もないな」
綾「ただ、わかったことはここの当主はどうもアメリカと何か関係がありそうですね」
その点に関しては俺も同感だった。
その証拠に、英語の本、燭台、パイプ、それに南北戦争の時の北軍の帽子。
いくら地主とはいえ、こんなものが江戸末期の農家にあるのは不自然だ。ひょっとしたらここの当主は幕臣ではないだろうか。
幕臣で思い出したが、この埋蔵金の張本人もアメリカに精通していた。
もしかすると…………。
そう考えていた時。
綾「涼さん!ちょっと来てください」
涼「え?」
綾「何か、丁寧に梱包されているものが……」
綾さんは梱包されている布を取り、その入れ物が閉じられている紐を解いた。
中を開けると、1本の巻物が入ってあった。
巻物を開くと、このような文章が書いてあった。
『東方ヨリ越後荷重ノ和合ワセ基ノ木ノ下デ皆見向キ
鐘軌五肢召ス芳香ニ互ノ路知ルス意思アリテ
下ニ眠ルハ分銅金』
涼「下に眠るは分銅金……」
あった………これだ。
綾「箱の中にもう一枚ありますね」
綾さんが中に入っていた紙を取り出した。
その紙にはこう書かれていた。
・ 食 ・
・ 茶 ・
・ 妙 ・
涼「食、茶、妙………?」
これは一体……。
ふと気がつくと、辺りは夕焼けになっていた。
涼「そろそろ暗くなるし、続きは明日にしよう」
綾「ええ……」
おそらく、これが埋蔵金のありかだ。
でも……越後荷重という意味の言葉は存在しない…。
ん…待て、意味?
意味がわからずとも、言葉が似ているのはいくつかある。
荷重という言葉をひらがなにすれば『にじゅう』となり、別の言葉ができそうだ。
その夜。
涼「鐘軌……しょうき………うーん……」
布団の中で暗号文を解読していた。
あともうちょいなんだけどなあ………。
綾「まだ……起きていたんですか?」
後ろから綾さんが呼びかけた。
涼「うん、結構病みつきになってね」
巻物をいったん置いた。
涼「もうかれこれ1週間か……」
俺は軽く溜め息をついた。
綾「ええ……」
涼「もし、埋蔵金が見つけられなかったら……どうしよう…」
綾「え………」
涼「綾さんと、結婚できなくなるな……………」
綾「でも、最初の辰夫さんのビデオの内容が解読できたわけですし………」
涼「でも、これはビデオの延長上だしなあ……」
深々と溜め息をついた。
涼「俺……綾さん以外の人との結婚なんて考えられないよ」
綾「涼さん……」
感極まって、俺は綾さんを抱く。
綾「私も……涼さんじゃなければ………」
涼「これで、結婚の話がなくなったら、死ぬかもな…」
綾「そんな……」
さすがに言い過ぎた。
涼「ごめん、心配かけちゃって。俺は死なないよ」
綾さんは今にも泣きそうな顔だった。
涼「大丈夫、俺が死ぬ時は大往生か、誰かに殺されるぐらいなもんさ」
綾「えっ………」
涼「といっても、恨み事は買ってないし、大丈夫」
綾「そうですか……………」
涼「もし…」
綾「え?」
涼「殺されるとしたら、綾さんになら………俺、殺されてもいいよ…」
綾「涼さん………………私だって……あなたになら…殺されても………」
俺は綾さんをみつめる。
そして綾さんも俺をみつめる。
お互いの距離が近づいたその時、
俺は綾さんの向こうにある、掛け軸を見た。
そしてそこには……。
涼「あっ…」
綾「え?」
涼「食、茶、妙だ……」
掛け軸には、さきほどの暗号の巻物と一緒に入ってあった紙と同じ言葉が書かれてあった。
涼「やっぱり……この言葉に何かが……」