会社から一直線に自宅に帰った。
涼「ただいまー」
綾「あっ、涼さん。お帰りなさっ…ケホッケホッ」
すると、マスクをつけた状態で綾が迎えに来た。
先程の咳からすると風邪を引いたとすぐに理解した。
涼「風邪?」
一緒に寝ているはずだが自分は平気。
綾「ええ、ちょっとですけ…コホッ」
涼「あ、無理に喋らなくていいよ」
喋るのが辛そうだ。
それにいつもの声と違う。
ここは綾の言いたい事を代弁するか。
涼「夕食はできてる?」
綾はこくんとうなずく。
…俺のアドバイスに素直に応じるのが可愛い。
涼「あとは……風呂も沸いてるし寝る準備も?」
こくこく。
となると、後は夕食の片付けぐらいか。
涼「そんじゃ片付けは俺がやるから綾は御飯を食べたらベッドで寝てなよ」
こくん。
夕食を終え、食器を洗い終える。
すでに綾は風呂を入り終え、ベッドで就寝しようとしている。
………特にやる事もないし、俺もベッドに潜り込むとするか。
風呂から出て、すぐにベッドに向かった。
寝室の戸を開け、ベッドの様子を窺う。
……吐息が聞こえないから寝てはいないようだ。
ベッドに入り込む。
綾「え」
『自分は風邪気味なのにどうして?』と思ったようだ。
綾「…風邪……移っちゃいますよ」
綾の心配に対しての返事はまず行動で返す事にした。
綾の背中に手を回し、こちらに引き寄せて優しく抱擁した。
そして、耳元に囁く。
涼「平気」
ふと、付き合う前の時に風邪を引いた綾を見舞いに行った時の事を思い出した。
結局風邪は移らなかったから、今回もまあ大丈夫だろう。
それに嬉しいのは、自分が風邪を引いて弱っていても俺を心配してくれてる事。
やっぱり優しいよな。
涼「風邪、早く治そうな」
綾「はい」
綾はにこりと微笑んで目を閉じた。
綾「…………すー………くー……」
抱かれている事に安心感を得たのか、すぐに眠りに落ちた。
涼「おやすみ、綾」
気持ちよさそうに寝ている綾に囁き、自分も目を閉じた。
できれば綾と同じ夢が見れたらいいな。
そう思いつつ眠りに落ちた。