『如月 涼』
高校3年生。18歳。
性格は猪突猛進、とまではいかないが、夢中になりやすい、いわば凝り性。
スタイル、ルックスについては中のやや上か。
成績ははっきりいって上の方。
勉強はあまりしていないが、天性の勘によってこのような上位にくいこんだと思われる。
さて、そんな『如月 涼』が『藤原 綾』に恋をする話である。
4月9日、始業式。
俺もようやく高校3年。
高校最後の1年間だが、あいにくと何も考えていない。
その時はその時で何とかする。
今までもそうだった。
しかし、この日は俺にとって重大な日でもあった。
俺の高校は、3年間ずっと同じクラスで生活している。
そういうしきたりであるのだ。
なぜかは知らないが。
ただし、転校生は別としている。
別に、転校生はクラスを選べるわけではなく、転校生は歓迎されていて、入学が可能なのだ。
まあ、早い話が人手不足なのだ。
もちろん、担任もそのままだ。
不良ばっかで手が付けられないクラスに付いたときは運の尽き、ずっとそのままだ。
ある意味、天国と地獄だ。
始業式が終り、HRが今終った所で、担任が来た。
担任「おい、如月、はいこれ」
担任からHRの最中に分けられた手紙を渡された。
あれ?俺はちゃんともらったし、誰も休んでないのに…。
涼「先生、これは?」
担任「転校生の分」
転校生?そんなの聞いた覚えがないのに…。
涼「転校生?」
担任「あっ、そうか、お前確か終業式の日に部活でいなかったんだな」
涼「終業式んときに転校生のことを言ってたんすか…何でまた俺に?」
担任「転校生がお前の近所だからな」
涼「なるほど、そうですか…それじゃわかりました」
俺は納得し、手紙を受け取った。
部活終了後、そのまま転校生の家に行く。
住所が書かれているメモを見ながら行く。
涼「転校生ね…どうせ男かブスだろうな…」
転校生は対して美人でもなく、男も美男子というわけでもないというのが常識である。
そしてメモに書かれている住所に着く。
そして唖然とした。
これまたなんてでかい家だこと。
普通の家2,3件ぐらいはあろうかという大きさだ。
涼「これだとますますブスかブ男だろうな」
表札を見てみる。
『藤原』と書かれていた。
涼「藤原か…」
そういえば以前、歴史の先公が『藤原』という名前は歴史上の人物、藤原氏の一族に関係があると言っていた。
だからこんなにでかい家なんだろうな。
インターホンを押す。
ピンポーンと音がする。
しかし、初対面との人に話すのは緊張する。
どんな人かわからないから怖いのだ。
そんな事を考えながらインターホンの返事を待つ。
押してから10秒後。
インターホンからの声「はい、藤原です」
よあ、結構かわいい声だな。
涼「わたくし、水無月高校の3年5組の如月涼と申しますが、藤原綾さんはおりますでしょうか?」
失礼のない言い方だ。問題はないな。
インターホンからの声「はい、わかりました。少々お待ちください」
そしてインターホンからの声がとぎれる。
多分玄関に来るんだろう。
しかし、かわいい声だったなあ……こりゃもしかすると上玉かも。
いや待て、やはりここはかわいい声とは裏腹にすごいブスじゃねえかな、案の定そうかもしれん。
そんな事を考えていると、ドアの向こう側からパタパタと歩いてくる音がはっきりしてきた。
よし、とりあえず、学校からの手紙を持ってきました、と、言えば問題ないな。
ドアが開けられた。
しかし、その瞬間、全ての考えが粉々になった。
ドアの向こう側には、女性が立っていた。
その女性はおせじでもないほどの美人だった。
腰までありそうな黒髪。
すけるような白い肌。
おとなしそうな顔つきだが、芯の強さをかんじさせる顔。
きゃしゃで、抱くと折れてしまいそうな体。
一目見てそんな感じのする女の子だった。
服装は白いブラウスに薄紫のロングスカート。
地味な服装だが、色調というか、全体の雰囲気がピッタリで、彼女の持つ魅力を何倍も引き出しているように見えた。
………おっといかんいかん。じろじろ見ていては変態扱いだ。
涼「えっと…藤原綾さん…ですね?」
綾「はい、私が藤原綾です、えっと」
恐らく名前を思い出しているのだろう。
涼「同じクラスの如月涼です」
綾「あっ、ごめんなさい、私、前日寝込んでしまいまして」
なるほど、だからいなかったんだな。
涼「今日配布されたプリントを持ってきました」
そう言って、プリントを渡す。
綾「わざわざ持ってきてくれたんですね、ありがとうございます」
そう言って綾はにっこりと微笑んだ。
うっ、かわいい。
彼女の笑顔を見ているとこちらまでにやけてきそうだ。
涼「いえ、どういたしまして」
こちらも軽く微笑む。
涼「えっと、明日のことですが…大丈夫でしょうか」
明日これるのか気になって質問してみる。
綾「ええ、無事に治りましたので大丈夫です」
涼「そうですか、それならよかった、それでは、俺はこの辺で」
綾「それではまた明日」
お互いにさよならと言って俺は家に帰る。
家について、夕食後も、寝る時も彼女のことで頭がいっぱいだった。
あの人を思うと胸が苦しくなる。
涼「藤原…綾…か」
彼女の名前をつぶやいてみる。
徐々に胸が高まる。
この気持ち……何なんだろう………。
…………………………………………………………遅刻だーっ!!
大急ぎで学校に向かった。
学校では。
先生「えー、では出席を取る……赤坂……井上…」
そして、そろそろ如月の名前に近づいてきた。
先生「……香藤………香山………如月」
涼「はいっ!!」
呼ばれたとほぼ同時に教室に入る。
ま…間に合った……ほっ…。
先生「おっ、珍しいな、いつも10分前に来るお前が来るなんて」
涼「ええ、ちょっと…」
とりあえず席に座った。
ふー、何とか間に合った。
隣の人「ふふ、危なかったですね」
涼「ああ、なんとかね………ん?」
あれ、俺の隣って、確か男だったよな?
隣に振り向く。
そこには、綾さんがいた。
綾「おはようございます」
涼「お…おはようございます」
あまりの出来事に、丁寧語になってしまった。
え?何で綾さんが隣に!?
嬉しいことは嬉しいけど…逆に緊張が…。
休み時間が来たので、すぐさま先生の所に行く。
涼「ちょ、ちょっと先生、どういうことですか」
先生「え、何って」
涼「藤原さんの席ですよ」
先生「何って、順番通り」
涼「え?」
先生「ほら」
確かに名簿を見ると確かに順番通りに来る。
な、なんて偶然なんだ……。
かくして、俺の最後の1年間が始まった。