涼「ん、なんだろ…これ」
テーブルの上に、小さな銀紙に包まれたものがあった。
チロルチョコのようだ。
カバーをはがして何味かわからないような感じだ。
綾のだろうか。
涼「綾―」
綾「はい、なんですか?」
遠くから綾の声が聞こえた。
涼「テーブルの上にさ、銀紙につつまれたものがあるけど、これは綾の?」
綾「あっ、それでしたらお母さんが持ってきたんです」
涼「母さんが?」
綾「ええ、涼さんにあげるって」
涼「じゃあ、食べてもいい?」
綾「いいですよ」
母さんが持ってきたのか。
ま、俺あてってことだから気がね無く食えるな。
銀紙を剥く。
中身はチョコレートだった。
それを口に放り込む。
むぐむぐと食べる。
……普通のチョコレートだな。
なんか妙な味がしたけど、ウイスキーボンボンじゃないし、問題ないか。
1時間後。
涼「うう……」
綾「だ、大丈夫ですか?」
涼「いや、別に苦しいわけじゃないけど、その代わり…」
綾「その代わり?」
涼「下の方がすごい元気なんだ」
綾「えっ!?」
途端に綾が真っ赤になる。
涼「いくらなんでもこんなには……あ」
綾「ど、どうかしましたか?」
涼「母さんのチョコレートだ。妙な味がした」
綾「じゃ、じゃあ……こ、これはお母さんが原因?」
涼「いや、何も指差す事は……」
母さんに電話をした。
綾の母「あらあら、食べちゃいました?」
涼「あれは……一体なんです?って言いたいとこですけども、ある程度予想がついています」
綾の母「じゃあ、なにかしら?」
涼「…ガラナチョコ」
綾の母「あら、よくわかったわね」
涼「ええ、ものの見事に下の方がビンビンですから」
綾の母「あら、やだわ。嫁の母親にそんなことを言うなんて」
涼「……そんなことを言わせた原因はあなたですよ」
綾の母「でも、1つだけだから一回やるだけで解消されるわよ」
涼「ああ、成程……ってそうはいきませんよ」
綾の母「あら」
涼「母さんの言葉をうのみにしてそのまま綾と寝かせるのが母さんの企みでしょう」
綾の母「あらあら」
涼「そうそううまくいきませんよ、じゃっ」
受話器を置いた。
はいわかりましたと言ってやるわけにはいかない。
まあやっちまった方がいいのだろうが。
綾の所へ戻った。
涼「やっはり母さんだった」
綾「そうですか…………その、どうします?」
赤くなりつつ綾が聞いてきた。
涼「いや、しない」
綾「大丈夫なんですか?そ、そんなに……」
涼「まあ、確かにすごい元気だけども、やっちまったら母さんの思うツボだ」
綾「じゃあ……我慢するんですか?」
涼「……………できっかな、俺」
綾「………………………じゃあ……その…………」
涼「え?」
綾「わ、私が……涼さんのを……その…………」
涼「それこそ母さんの思うツボなんだ」
綾「あっ………」
綾は思いっきり赤くなった。
涼「まあ、というわけで、我慢するよ」
綾「………………………」
涼「……綾?」
綾はおもむろに立ち上がり、部屋を出た。
涼「お、おい…綾?」
綾「もしもし、お母さん?」
綾の母「あら、どうしたの?」
綾「さっきのガラナチョコ、まだあります?」
綾の母「え!?」
綾「ですから、チョコはありますか?」
綾の母「あ、あるけど…まさか綾……」
綾「私も食べます」
綾の母「どうしてあなたまで……」
綾「涼さんと抱くのがそんなに楽しいのなら、十分楽しんでください」
綾の母「………」
完全に綾は怒っている。
ここまでストレートに感情をむきだしにしているとは。
綾の母「……ごめんなさい、やり過ぎたわ…」
綾「お母さん……」
綾の母「で、チョコレートはどうするの?」
綾「全然反省してませんね…」
受話器を置いた。
涼「綾……」
綾「涼さんだけ辛いのは嫌です」
綾はきゅっと俺を抱いた。
感情が高ぶっているせいか、行動も大胆になっている。
涼「いい嫁さん、もらったな……俺」
綾「涼さん…」
涼「ほんと、いい子だよ……綾は」
そして翌日。
涼・綾「おはようございまーす」
綾の母「あら、朝かららぶらぶね」
綾の母が見たのは涼と綾が腕を組んでいる姿だった。
綾「ふふっ、これからは堂々と涼さんとすることにしたんです」
涼「これなら、母さんやおじいさんに攻められることはありませんから」
綾の母「うっ、せっかくできた趣味が…」
涼「あ、そうそう。ガラナチョコのおかげでけっこう精力出ましたから」
綾「あの時涼さん、すごく激しかった……」
綾の母「………」
絶句。
どうやらもう下ネタによる攻撃は通じなくなったようだ。
涼「じゃ、まあそういうことで」
そのまま腕を組みながら帰っていった。
涼「………ふーっ」
綾「なんとかごまかせましたね」
涼「ああやって思いっきりやったフリをすれば向こうもどうしようもないだろう」
綾「…でも、よく我慢できましたね」
涼「ま、俺も男だしね」
綾「…………」
涼「綾?」
綾「…じゃ…あ、ごほうびに…今夜……好きにしていいですよ」
涼「え?」