「これはどういう事だ、如月」
自分の目の前にいるのは担任の先生。
そして突きつけられているのは中間試験の答案用紙。
答案用紙は全教科満点。
本来なら褒められるはずだが逆に疑いの眼差しを向けられている。
華「はあ?どういう事も普通に書いただけだけど」
カンニング疑惑をかけられている。
華「だいたいカンニングなんて点数の悪いやつがやる事でしょ」
先生「ああ、そうだ。だが今回の試験はハイレベルな問題だらけだ」
華「じゃあ、あたしは超がつくぐらいのユートーセーって事じゃん」
先生「…本当に胸を張って言えるのか?」
これだ。
自分を信じてくれない。
満点なんて漫画や小説の世界でしかありえない。
目の前にいる先公はそう思ってる。
その瞬間、怒りと同時に閃くものがあった。
華「ふーん、じゃあ次の期末試験でハッキリさせない?あたしだけ隔離して試験受けるから」
先生「何?」
華「風邪ひいたとかテキトーな理由つけてさ。もしそれで学年1位取れなかったら先生の前で土下座すっから。何ならケータイで撮影してもいいよ」
先生「…それは本当だな」
華「うん」
先生「…よし、わかった」
華「じゃ、あたしの審議は期末までお預けってことで」
教室を出て、下駄箱へと向かう途中、鏡を見た。
およそ二カ月後に起こるであろう出来事を想像して笑みがこぼれていた。
二カ月後。
如月を連れて行った場所は視聴覚室。
如月には試験を受ける場所は事前に伝えていない。
こうすれば机に細工ができない。
さらに座る場所も指定する。
万一細工をしていても座れなければ意味が無い。
先生「じゃあ、携帯を渡してもらおうか」
これで外部からの情報も遮断できる。
近年の受験では携帯電話を使った不正が行われているが、これで問題ない。
先生「では、この筆記用具を使ってもらおう」
こちら側で用意した筆記用具を使用してもらう事でカンニングペーパーを筆記用具に隠していても使われる事は無い。
さらに学校でサンプルとして使われているジャージに着替えてもらう。
制服に忍ばせている可能性もこれで消滅した。
華「あーあ…このジャージ、ダサくて着たくないのになあ…」
まだそんな余裕の言葉を発しているのか。
ジャージに着替え、指定した席に座らせた後、一列前にと一列後ろにビデオカメラを設置し、さらに如月の席の左端と右端にも設置。
四方からの監視によって不正の瞬間を逃さない。
これでカンニングは不可能だ。
華「……大袈裟」
先生「大袈裟なくらいでいいんだ。これでお互い納得できるだろう」
華「まあね、さっさと始めてよ」
ちょうどチャイムが鳴った。
鍵付きの鞄から問題用紙、解答用紙を取り出して如月の前に差し出す。
華「あー……さっさと終わらそ」
如月は指定された筆記用具のうちシャープペンシルを手にして答案用紙に書き込んでいく。
速い。
問題用紙は事前に目を通していたが今回は中間試験よりも難易度が高くなっている。
あのスピードで解答しているのか?
馬鹿な。
適当だろう。
華「ふわあーあ………」
如月は解答用紙に全て記入したのか、欠伸をして机に突っ伏して寝てしまった。
終わったのか?
そんな馬鹿な。
適当としか思えない。
だが、もしこれが如月の学力だとしたら…。
採点して血の気が引いた。
全教科満点。
カンニングは一切していない。
これが如月の本当の実力か。
華「ふっふーん、どう?」
先生「すっ、すまなかった!先生が悪かった!」
カンニングを疑っていたかつての自分があまりにも愚かだった。
華「…で、カンニングだと決めつけていた事に対してお詫びは?」
如月の言葉に息を呑む。
まさか、教育委員会に告発するつもりなのか。
先生「た、頼む。教育委員会に告発するのだけは…」
華「あー、そういう事はしないから」
先生「え?」
華「その代わりにさ、次回の試験はあたしに作らせてよ。一度作ってみたかったし」
先生「そ、それで済むのなら構わないが…」
だが、その言葉はあまりにも軽はずみであった事を痛感した。
他の先生「先生!これはどういう事ですか!」
職員室にて他の教師達から非難とも言えるクレームの嵐だった。
それは如月が作成した試験が桁違いの難問だらけだった。
大半の生徒が赤点を量産し、学年の中でも秀才といえる生徒ですらやっと50点という有様だった。
如月の逆襲はこんなところで起きていた。
先生「い、いやこれは全国のレベルの水準を理解するべきと思って……」
何故信じられなかった。
マンガのようなスペックを持っていた如月の事を。
もはや後の祭りだ。
今は苦しい言い訳をするしかなかった。
なお、華蓮は自分で作ったのだから当然満点であった。