「それじゃパトロール行ってきます」
卒配されてこの派出所に着いてから二か月が経過した。
この派出所は駅前にある。
それは人通りが多い場所で、トラブルも多い事になる。
女子高生が中年男性に貢いでもらう、いわゆる『パパ活』にも遭遇した。
未然に防げれば問題は無い。
警察はどうしても後手になってしまう。
それをメディアが警察は無能という風に評価されてしまうのが警察官である自分は悔しく感じる。
真面目に勤務している者が、対岸の火事の如く怠慢な者と同じ扱いをされている。
警察は正義の味方。
そういうイメージを作っていかなければならない・
だからこそ、こういう小さな行動を大切にしていかなければならない。
メインの大通りを歩いていく。
このまま街中の端まで歩き、繁華街のある通りへと歩く。
これがいつものルートになる。
ただ毎回同じルートだとそういう輩に覚えられてしまい、犯罪を起こされる事になってしまう。
次回は違う時間にして違うルートにしよう。
そう思いながら歩いていると20メートル先に制服を着ている女性を見つけた。
あの制服は確か近くの高校の制服。
腕時計を見ると時刻は午後6時32分を指していた。
部活帰りという可能性もあるが、奇妙に見えた。
誰かを待っているように見える。
それも、挙動がそわそわしている。
意中の人を待っているのだろうか。
ふと、女子高生の視線が一点を見て、大きく手を振った。
待ち合わせの人が来たのだろう。
その女子高生の視線を追うと、その人物はスーツを着た男性。
その男性の見た目は30代で、女子高生の父親には見えない。
「悪い、待ったか?」
「んーん、大丈夫。プリクラ撮ろ、プリクラ」
「お前ほんとプリクラ好きだよなあ」
楽しそうな会話をしているが、違和感を感じる。
パパ活か。
とりあえず確認をするべきだ。
2人の所に歩き、声をかける。
「すみません、ちょっといいですか?」
2人は声に気づき、こちらの方を向いた。
警官であると理解した瞬間、嫌そうな顔をした。
やはりパパ活か。
「何です?これからデートなんですが」
デートとは思い切った発言だ。
開き直っているようだ。
「申し訳ありませんが身分を証明できるものはありますか?年齢を確認したいので」
「華蓮、持ってるか?」
男性がポケットを探りながら華蓮と呼ばれた女子高生に声をかける。
「うん、マイナンバーカード作った」
女子高生も所持していたスポーツバッグからマイナンバーカードを取り出し、こちらに渡してきた。
「はい、俺の免許証」
男性も免許証をこちらに渡してきた。
名前を確認する。
「ええと、如月涼さんに如月華蓮さん……え?」
同性?
「こいつ俺の孫」
男性が女子高生を指しながら言った。
「この人あたしのじいちゃん」
女子高生も同様に男性に指さす。
「え!?」
思わず声が出た。
男性の生年月日を見た。
還暦。
「え!?え!?」
この30代の男性が、還暦を迎えた、いわゆる『おじいちゃん』である事に声が出た。
「そんなわけで孫とデートしてるけど、もういい?」
「は、はい。失礼しました」
2人が去っていくのをただ茫然と見つめる事しかできなかった。
遊び終えた後に、ファミレスで軽い食事を取った。
涼「ところで、華蓮はどこの大学を受けるんだ?」
華「んー、家から近くのとこにしようかなって」
涼「……どうせなら、東大受けてみたらどうだ?行ける学力あるんだし」
華「えー、じいちゃんも親父とおんなじ事言うの?」
光一も同じ事を考えていたか。
せっかくの才能も埋もれさせたらもったいない。
涼「別にいい大学行っていい会社に行けってわけじゃないさ。それよりも面白いモノを探すために行くのもアリさ」
華「面白いモノ?」
涼「ああ、だいぶ前に東京へ出張に行った時に六大学の…どこだったかな…その大学の横を通った時に施設の中から昭和時代のフォークソング唄ってそうなやつが出てきてな」
華「あはは、じいちゃんの時って平成っしょ?ぶっ飛んでるじゃん」
涼「ああ。ただ単に頭の良い人だけが六大学に行ってるわけじゃないんだなって」
華「面白い人か……」
涼「まあ、華蓮次第だ。思いっきり悩んでみろ。じいちゃんから言えるのはこんだけだ」
華蓮は何かを考えながらフライドポテトを口にした。