綾「くしゅんっ」
クシャミ。
綾「くしゅんっ」
またクシャミ。
クシャミは今だけではなく、少し前から頻繁に出ている。
涼「どうやら、風邪みたいだな」
出産後、ということもあるのだろう。
綾はとりあえず寝かせればいいが、問題もう一つある。
涼「うーん…」
綾「春香は…どうしましょうか」
問題は春香をどうするべきか。
綾と一緒にいると間違いなくうつる。
涼「…あ、そうだ。俺と一緒に会社に行けばいいんだ」
綾「え!?」
会社は結構空気がいいし、割と静かだ。
涼「よし、それじゃ春香の初めての社会見学を始めるか」
ちゃっちゃと春香を抱き上げ、出かけていった。
で、残された綾は。
綾「涼さ〜ん、おじいちゃんのところに預ければ…くちゅんっ」
実はもうひとつあった解決法は、涼の耳には届かなかった。
会社始業時刻の10分前。
涼「おはようございまーす」
澪「おはよう…あら?後ろにしょってるのは?」
涼「ええ、娘の春香です」
澪「…サラリーマン金太郎みたいね」
涼「…読んだことないからわかりませんけど、まあ言いたい事は理解できます」
社員「おー、これがお前の赤ん坊か。かわいいじゃないか」
社員「やーん、かわいいー」
涼「澪主任、今日は特にお偉いさんもこないですし、いいですよね?」
澪「ええ、いいわよ」
社員「まだ喋らないのか?」
涼「そうですね。もう少ししたら喋ると思うんですけど」
しばらくして、春香が泣き出す。
食事は済ませたので、多分トイレだろう。
涼「おっと、オムツかな」
ぺりぺりとオムツを脱がそうとした瞬間、視線を感じた。
大半の社員がオムツの交換を見物している。
涼「とうっ!」
男のみ蹴りぬく。
社員「な…何すんだ…」
社員「俺は先輩だぞ」
涼「先輩であろうとなんであろうと春香の裸を見ていいのは俺のみ!」
残った女子社員は涼の発言に軽くひく。
涼「まったく、これだから男という存在は…」
澪「…あなたもでしょ」
この一連のやりとりによって、涼以外の社員はこう思った。
『今も親バカだが10年経っても親バカだろう』
この予想は当然当たり、さらに17年経過しても親バカは続いている。