綾「すー……すー……」
涼「おーい、綾、大丈夫か?」
綾「ん…大丈夫です……でも…少しだけ寝かせ…くー…」
涼「…ふーむ……」
どうもここ最近綾の調子がおかしい。
というより、変だ。
ここ最近になってからやたらと寝る。
しかし瞬時に眠くなって倒れる、なんていうのはない。
ただ単に眠くなってくるようだ。
夜もちゃんと寝ているので寝不足というわけではない。
涼「…というわけなんです」
信「ふむ…ということはここ最近になってやたらと寝るようになったと」
涼「…言っときますけど行儀が悪いというレベルではないですよ」
綾母「そうね……綾はそんな事はしないはずだから…」
涼「……しかし、ここ最近になって寝るという事は綾の身に何かしらの変化があったっていう事でもあるんですよね」
信「まあ、そうじゃろうな」
涼「…もしかしたら……」
近くにあったメモ用紙にさらさらと書く。
涼「……ちょっと母さん。これ、買ってきてくれます?俺はちょっと買いづらいので」
綾母「ええ、いいわよ………って、これは…」
涼「多分、というかそれしか原因が見当たらないんです」
綾母「買ってきましたよ」
涼「ありがとうございます」
綾母「ふふ、うまくいくといいわね」
涼「ええ」
綾「りょ…涼さん……」
涼「……その反応でわかったよ」
母さんが買ってきたのを取り出す。
それは妊娠検査薬だった。
涼「えーと…、懐妊です」
信「ほっほっほ。めでたいのう」
綾母「でもよくわかったわね。眠くなるのが『つわり』だって」
涼「ええ。以前本で眠くなるつわりがあるって書いてあったもので」
病気でもない以上、それしか考えられなかった。
涼「子供か……まあ産まれてくるまでに名前考えとかないと」
その日の夜。
綾「……」
涼「綾、どうした?」
綾「ええ。涼さんだったら、男の子と女の子、どっちがいいですか?」
涼「…………………うーん…」
以前も考えてたが、答えは出ない。
まあ狙ってできるモノでもないだろうし。
涼「俺は男の子でも女の子でもいいよ。綾の子供だもん」
綾「ふふ…涼さんらしいですね」
涼「…こういうノロケ話も聞いてるのかもな」
綾「…そうですね」
涼「綾…、今更だけど…その……」
綾「……不安ですか?私の身体」
涼「…正直、ね」
綾「大丈夫です。私は負けません」
涼「…わかった。俺は綾を信じるよ」
長いようで、短い10ヶ月が始まった。