深夜。
泣き声。
涼「ん、またか」
むくっと起き上がり、泣いている春香を抱きかかえ、あやす。
おそらくお腹がすいたのだろう。
綾「ご飯ですね」
ほぼ同時に気付いたのだろう、綾もむくりと起き上がる。
ここ毎日続いてるので赤ん坊の習慣が見えつつあるようだ。
涼「はい」
春香を綾に渡し、母乳を与える。
予想通りお腹がすいていたらしく、よく飲んでいる。
涼「……」
その光景をじーっと見る。
その視線に気付いたのか、綾は赤くなり。
綾「あ、あげませんよ」
……。
涼「…いや、俺は母乳の成分は血とほとんど同じなんだなと考えていたわけで」
綾「……」
涼「そもそも母乳は味がほとんどしないみたいだしね」
綾「……」
涼「ていうか春香の大切な食事を奪う程飢えてはいないよ」
綾「……」
涼「…まあ別の意味で飢えてはいるけどね」
妊娠して以来していないため、ちょっとしたオオカミ状態。
我ながらよく我慢しているなあと感心している。
春香は満足したのか、泣くのをやめていた。
涼「さて、ゲップをしてやらないと」
ひょいと春香を抱きかかえ、ぽんぽんと背中をさする。
何度かやっていると春香の口からゲップが出る。
満足したのか、春香は再び寝始めた。
ぽふ、と布団に寝かす。
涼「さて、と」
布団に座り、綾と向き合う。
まだ綾は赤いまま。
涼「…寝れる?」
綾はふるふると首を振る。
ある程度疲れが出れば寝るのは容易なはず。
…出産してから体力も回復して元通りになったから大丈夫だと思う。
涼「…しよっか」
綾「う、うん」
涼「あ、あとさ…やっぱり飲んでいい?母乳」
結局飲みたいのです。旦那としては。
嫁さんのモノは旦那のモノ。
綾「…ちょ、ちょっとだけ…ですよ」
それは綾も理解している。
感想としては『やっぱり味がしない』ということである。