涼「うーん…」
寝ている春香を見て、考える涼。
綾「どうかしましたか?」
涼「んー…あと20年ちょっともすれば春香も結婚するんだろうなあと思ってさ」
綾「…ふふ、まだずっと先ですよ」
涼「まだ20年、かもしれないけど20年しかないという事でもあるしなあ…」
綾「…もし、春香がお婿さんを連れてきたらどうします?」
涼「えー、そんな事思いつかないよ」
綾「でも、いつかは『その時』が来ると思いますよ」
涼「『その時』ねえ…あまり来ないでほといな…」
ごろん、と横になり、目を閉じた。
春香の恋人、か…。
父親というのは色んな問題を抱えるものだな。
…………。
涼「ん…」
目を開ける。
瞼をこすり、眠気を払う。
…夢か。
ずいぶん昔の夢だな。
綾「あ、お目覚めになりました?」
春香が生まれておよそ18年が経つ。
…綾はまったく老けない。
…俺もだが。
涼「うん…昔の夢を見ていたな」
綾「どんな夢です?」
涼「ああ、春香が生まれて間もない頃でさ、いつか春香も結婚するんだなあって話」
綾「そういえばしましたね。恋人が出来たらどうするかって」
涼「…『その時』が今なんだろうなあ…」
すると、玄関で声がした。
春「ただいま帰りました」
噂をすればなんとやら、か。
光「お邪魔しまーす」
……ホントに噂をすればなんとやらだ…!
涼「ん、お帰り。春香」
春「ただいま帰りました。お父さん」
光「あ、こんにちは。おじさん」
………………………むかっ。
涼「とうっ!」
返事として飛び蹴りを放つ。
とっさに避ける光一。
光「おわっ!何するんですか!」
涼「るせえっ!俺は認めねえぞ!」
光「認めないって何をですか!」
涼「俺個人の問題だっ!」
春「…何かあったんですか?」
綾「…ううん、いつもの事よ」
昔から18年。
そして、『その時』まで、あと約4年。
『まだ』という言葉は使われなくなった。
『もうすぐ』という言葉が使われようとしている。
昔は見えなかった、未来への道が、今確かに見えている。