タン、タンと牌の打つ音が教室に響く。
ぺらぺらと本を読む潤子(中身は涼)。
潤子「…あ、臣。リーチするの待った」
臣「えっ?何でわかるんだ?」
涼の視点からでは絶対に見えないため、リーチはおろかテンパイすらわからない。
潤子「なんとなくな。3巡してからリーチしてくれ」
臣「…わかった」
リーチするのをやめ、そのままダマテンで切る。
3巡してリーチ。
そして次で臣が取った牌は当たり牌。
臣「おっ、やった!」
潤「すごいじゃんか。何でわかったんだ?」
芹「ひょっとしたら『女の勘』じゃないか?」
潤子「ああ、そうかもしれませんね。一応女ってことだし」
この女の勘というのはかなり使える。
これのおかげで買い物でレジ待ちはほとんど無いし自動販売機でジュースを買ったら当たりが出るし。
臣「結構女を満喫してるじゃないか」
潤子「…そんなこたねえよ。チョーやだよ」
眞「お前は女子高生か」
女子大生ではあるけども。
潤子「毎月毎月股から血ィ出るし腹痛くなって頭も痛ぇで最悪だぜホント」
芹「…このまま戻らなくなる、というのもあるな」
潤子「えーっ、やだよそんなの」
臣「そうだな。一生女のままってこともあるわけか」
眞「…と、なると涼の身体を持った潤子に抱かれるってことか」
潤子「俺やだよ!あんなの俺のどてっ腹に刺さるのかよ!!」
眞「刺さるっていうなよ。アレが収まるスペースがあるんだからよ」
潤子「嫌だっ!俺は男なのにヤられるなんて!」
臣「一応女だろ」
一方、涼の身体を持った潤子の方はというと。
さら、と髪の毛が視線に入る。
涼「あーもう…」
そしてそれを手で後ろにやる。
梨「なんか大変そうね、それ」
涼「大変そう、じゃなくて大変なの。全然まとまらないのよ」
美「涼さんはそんな風になってなかったですね」
梨「そういやそうね。多分無意識のうちにロン毛をまとめるテクニックをしてるのよ」
涼「三つ編みにすればいいんだけど、そうすると涼君が『くせ毛がつくからやめて』って言うのよ」
梨「…どう?男の身体って」
涼「正直大変。まだ女の方がいいわよ。生理はあるけど別に慣れてるし」
梨「…男は男で大変みたいね」
麻雀を終え、帰ろうとする男達。
潤子の愚痴を聞き終わって帰る女達。
それぞれが玄関へと向かう。
男達が玄関へ向かう道は一直線。
その途中で曲がり角があり、そこの通路の向こうから女達が。
男達の先頭は涼。
女達の先頭は潤子。
うまい具合に涼は潤子に気付かないまま、見事に激突。
事実は小説よりも奇なりと言うが、小説もまた奇である。
ごつんっ、という音が響く。
臣「おっ、おい、大丈夫か涼?」
涼「んー、なんとかな」
潤子「いったいわねー、ちゃんと前を見なさいよ」
梨「…ん?ねえ潤子、戻ってない?」
潤子「え?」
涼「え?」
涼と潤子はお互いを見つめる。
次に自分の身体をまさぐる。
涼「戻った!」
潤子「戻った!」
芹「良かったじゃないか。無事に戻って」
涼「いやー、一時はどうなること…か…と…」
涼の言葉が途中で止まった。
その理由は潤子が涼の首をつかんでいるから。
潤子「りょ・う・く・ん。よっくもまあとんでもない格好と風邪とかひいてくれたわねぇ」
涼「え、あ、いや、その」
潤子「…」
潤子は無言で涼に襲いかかった。
しばらくお待ちください。
芹「…じゃあ、無事に元に戻ったということで今日は帰ろうか」
というか帰る予定ではあったが。
臣「そうだな。心配事もなくなったしまた明日からはいつも通りか」
梨「いつも通りが一番いいのよ」
潤子「じゃ、帰りましょ」
すたすたと帰る男女。
そしてその場に残ったのは肉片とかした涼しかいなかった。
…ちゃんと生きてます。多分。