梨「え――っっ!!まだ返事言ってないの!?」
潤子「う、うん…」
涼の告白の後、潤子は返事をする事ができなかった。
『返事はいつでもいいよ。それが断る事だったとしても』
そう言って涼は帰って行った。
梨「で…………あれから3日経ったわけだけどまだ言えてないと…」
潤子「ど、どうしても勇気が出なくて…」
美「でも、言わなきゃいけませんよ」
梨「美夏の言う通りよ。これはあんたが言わなきゃいけない事だから」
美「それに、両想いなんだから問題無いですし……」
美夏の一言でずどーんと潤子はヘコんだ。
潤子「……私なんかでいいのかなって」
梨「……え?」
梨花はすっとんきょうな声を出した。
ここまで弱気な潤子は初めて見た。
潤子「涼君……素敵だよね。男から見ても、女から見ても」
梨「まあね。ある意味馬鹿だけども素敵よ」
美「ああいう男性って誰からも好かれますよね」
潤子「……私と……つり合うのかな…?」
梨「………はあ…」
梨花は溜息をついた。
何を今更。
梨「……いーい?潤子。確かにあんたは料理が苦手で、家庭的じゃないわ」
その一言で潤子はさらにヘコんだ。
梨「性格もキツくて、いざとなると言葉よりもパンチが出るオンナ」
とどめの一言だった。
梨「でも、あんたは涼君が好きなんでしょ?」
潤子はうなづく。
梨「どうしようもないくらい、好きなんでしょ?」
潤子はうなづく。
梨「他のオンナに負けないくらい、好きなんでしょ?」
潤子はさらにうなづく。
梨「それで十分。涼君と充分つり合う」
美「結局、家庭的な部分なんて後で作れるんです。大事なのはどれだけ涼さんの事が好きか。これだけです」
潤子「……うんっ。ありがとう、梨花、美夏」
梨「さ、とっとと言っておいで。涼君が待ってるから」
潤子「行ってくるっ」
駆け足で大学を出ていった。
梨「……やれやれ、手間のかかるオンナね」
息が苦しい。
大学を出てから止まる事なく走り続けている。
大学祭までの練習中に何度も一緒に劇の事を話し続けていた、この道を。
涼は見つからない。
……あとはあの練習を見た公園しかない。
公園に辿り着いた。
しかし、見当たらない。
どこにいるんだろう。
そう思った時だった。
公園の端にある木の後ろから、ひょいと涼君が出てきた。
いた。
大急ぎでそちらに向かう。
涼君はこっちに気付いてない。
こっちに背を向けて、帰ろうとしている。
呼びとめなきゃ。
声が出ない。
息切れしているからではない。
勇気が出ない。
……今言わなきゃ、いつ言うのよ。
自分に言い聞かせた。
ぐっと手を強く握る。
自分を奮い起こすために。
潤子「待って!涼君!!」
ぴたり、と足が止まった。
涼が振り向く。
振り向いた先には、潤子がいた。
涼「潤子さん…」
潤子の方に近づく。
涼「どうしたの?そんなに息を切らせて…」
潤子「………君が好き」
涼「え?」
うまく聞き取れなかった。
潤子「涼君の事が好きっっ!!」
言う、というより叫ぶという方が合っているような言い方だった。
潤子「もう、どうしようもないくらい好きなのっ!!!」
告白、というより激白である。
元々息が切れていたにも関わらず、一気に告白したためか、ぜー、ぜーと息を切らす。
ようやく息が整ってきた。
涼は潤子の手を握った。
潤子「涼…君……」
涼「ありがとう、潤子さん」
涼の手が、暖かく感じた。
とても心地の良い、暖かみがあった。
眞「だからよ、あそこで北切るこたぁなかったろうに」
臣「しょうがねえだろ、まさか向こう北の単騎待ちとは思ってなかったんだからよ」
潤「単騎は現物しかないからな。仕方ないと言えば仕方ないな」
茜「いやそれでも北はドラやったで、いくら使えへん牌でも切るのはあかんやろ」
梨「そういや芹禾の成績は?」
芹「今日は良かったよ。1位を2回」
梨「眞一郎さんは?」
眞「2位が2回。連続で芹禾と当たっちまった」
先程までやってた麻雀ゲームの話をしている7人。
茜「ま、とりあえず全員勝ちで良かったやん」
芹「それもそうだね………おや?」
臣「どした?」
芹「あれ……涼と潤子じゃないか?」
涼「お、みんな一緒に帰ってるのか」
芹「そういう涼と潤子は?」
涼「ん……へへ」
きゅっと潤子の手を握る。
潤子「ちょ、ちょっと何すんのよ!」
ドゴオッ
潤子パンチ炸裂。
臣「照れ隠しに潤子パンチはないだろうに…」
梨「ま、とりあえずうまくいったみたいね」
潤「これでめでたしめでたしと」
涼「……俺は助けてくれないの?」
潤子パンチの勢いで壁と一体化するかの如くめり込んだ涼はうめき声を上げつつ救出を求めた。