梨「え?涼の事?」
潤子「ん……………梨花だったら知ってるかなあと思って」
潤子と梨花と美夏は実は1年時クラスメートだった。
2年になってからは離れてしまったがこうして時々おしゃべりをする。
梨「まあ、知ってるけど………何を知りたいの?」
潤子「た、例えば………どんなヤツとか」
梨「………潤子、もしかして…」
潤子「な、何言ってんのよ!そんなわけないでしょ!」
梨「…………まだ言ってないんだけど」
にやりと梨花が笑う。
完全に墓穴を掘った。
それもマントル層に届くほど。
梨「まあ、普通の男よね」
潤子「……普通と言われても何がどう普通なんだか」
美「いい人ですよ。涼さんは」
梨「いい人だけど………バカよね」
潤子「ば、バカ?」
梨「そ。バカ。単純よ」
潤子「単純……」
美「よく言えば純粋ですね」
梨「それに、ああ見えても大学ん中じゃ優秀よ」
潤子「え!?そうなの!?」
梨「あいつがその気になれば首席取れるわよ」
美「頭がいいというより、頭の回転はすごいですよ」
梨「けど、単純なんでどっかヌケてんのよ」
潤子「どっかヌケてるって?」
梨「以前の試験で満点取ったにも関わらず名前書き忘れで0点」
美「それでも上位に食い込んだ所がスゴイですよね」
潤子「結局のところ……あいつはどんなの?」
梨「…まあ、文句はないわね。早いところゲットしないと持ってかれるわよ」
潤子「持ってかれる?」
梨「結構モテんのよねえ、あいつ」
潤子「そ、そうなの?」
美「今年のバレンタイン、袋にぎっしり入ってましたから」
梨「大変だったらしいわよ、鼻血出しながら食ってたから」
潤子「そんなにモテるんだ…」
梨「早くしないと持ってかれるわよ。白馬の王子様が」
潤子「そっ、そんなわけないでしょ!王子様だなんて思ってないわよ!!」
潤子「まったく……梨花ったら…」
あんなやつ、王子様には全くと言っていいほど見えない。
そもそも涼がどんなやつかを聞いただけだ。
『早くしないと持ってかれるわよ。白馬の王子様が』
やたらとあの言葉が頭の中でリピートされる。
あーっ、もうっ。
と、そこで涼とばったり遭遇。
涼「や、潤子さん」
『早くしないと持ってかれるわよ。白馬の王子様が』
潤子「うるさいわよっ!この馬鹿っっ!!」
真っ赤になりそうな衝動を強引に拳に変換させて涼の顔面にパンチを込める。
以前と同様に壁にめり込んだ。
潤子「ふんっ」
ぷいっとその場から離れた。
いや、逃げたと言った方がいいかもしれない。
あの男の前だとどうしても話せない。
………………………………………………………。
ひょっとして…………。
……す、好きになっちゃったのかな…。