晩御飯の時、
春「………」
春香の食が進んでいない。
涼「春香、どうしたんだ?」
春香は特に嫌いな食べ物はないはず。
春「……ううん、なんでもないです」
……それはない。
綾「春香、言った方がいいと思うわよ」
春「おかあさん…」
涼「一人で悩むよりも、誰かに相談した方がいいよ」
春「うん………じつはね、男の子に…いじめられてるの…」
涼「…いじめられている!?」
綾「相手は?たくさん?」
春「ううん、1人」
………となると、いじめではない。
それにまだ幼稚園だ。
まだ感情が未発達のため、そういった社会問題のレベルとは違う。
涼「どんな風に?殴られるとか」
春香は首を振る。
確かに、殴られた形跡は一切ないし、服の下にもそういった傷跡はない。
土とかかけられるというわけでもない。
涼「…………………………もしかして」
綾「?どうしたんですか」
涼「春香、もしまたいじめられたら、その男の子に、私の事好きなの?って聞いてみてくれ」
春「?」
涼「言った後でその男の子の様子を明日教えて」
春「?…わかりました」
綾「………?」
綾と春香は涼の言葉にちんぷんかんぷんだった。
そして翌日の晩御飯。
涼「春香、どうだった?」
春「うん、言ったら光一君真っ赤になって逃げちゃいました」
涼「……そっか…」
思ったとおり。
綾「どういう事です?」
涼「その光一君、春香が好きなんだよ」
綾「そうなんですか?いじめていたんじゃないですか」
涼「いじめてた、というより春香に好かれようとちょっかいを出しただけさ」
アピールする方法がなかなか思いつかず、こういう手段になってしまったと思う。
春「じゃあ、どうすればいいんですか?」
涼「そうだな、手をつないで、遊ぼうって言えばいいと思うよ」
春「わかりました。じゃあお父さんの言う通りにやってみます」
そして翌日の晩御飯。
春「おとうさん、光一君と一緒に遊びました」
涼「もういじめられなかった?」
春「はい」
春香がにこっと笑った。
もう大丈夫のようだ。
その日の深夜。
綾「涼さん………どうしてわかったんですか?」
涼「……光一君のいじめ方でね、どう見ても春香をいじめるという姿勢じゃなかったんだ」
綾「そうだったんですか」
涼「いつの時代も男ってのは女の子に好かれようと必死だからさ。俺だって綾に好かれようと必死だったもん」
綾「でも、いじめてはないですよね?」
涼「そりゃ……愛してる人にそんな事はしないさ、誰だって大事にするさ。ただやり方が違っただけ」
綾「…………光一君は………春香と結婚するんでしょうか?」
涼「なっなっなっ、何を突然…!」
綾「春香も光一君の事は好きみたいですし」
涼「そ、それとこれとは……」
綾「くすくす……」