暖かい日だった。
うとうとしている時、春香に呼ばれた。
春「おとうさん」
涼「どうした?春香」
眠い目をこすり、意識をはっきりさせる。
春「おかあさんから聞きましたけど、おとうさんは、おかあさんのどこが好き?」
綾に聞いたというのが少々耳に残った。
どんなことを聞いたのだろうか。
涼「綾のどこが……か」
春「うん」
涼「全部……じゃ駄目?」
春「だめです」
そう言われても。
久々に悩む。
涼「そうだ…なあ……、やっぱり綾の好きなところは優しいところかな」
春「ほかには?」
涼「他か……うーん、純粋なところ、かな」
春「じゅんすいって?」
涼「変なことを考えていなくて、ようは悪いことだよ。そういうのを何も考えていないって事だよ」
春「ふうん…」
涼「他に聞きたい事は?」
春「じゃあ、おとうさん、今、幸せ?」
俺はにっこりと笑い、
涼「もちろんさ」
そう返した。
涼「お話はもうおしまい?」
春「うん」
春香はちょこんと俺にもたれるように座った。
涼「ところで、お母さんに聞いたって言ってたけど、どんなこと話した?」
春「さっき聞いたこととおなじことです」
涼「それで、お母さんはなんて?」
少々気になった。
けど、綾の答え方はなんとなく想像できた。
春「もちろんって」
涼「そうか……」
やはり、俺の考えていたのと同じか。
もし、違っていたら……いや、そんなことはないか。
暖かい日差しだ。
意識がふわっとしてくる。
春「…おとうさん?」
春香の声が届かなくなった。
綾「春香〜、どこなの?」
春「おかあさん、ここ」
春香の声がする方に向かう。
そこには、涼もいた。
だが、涼は寝ていた。
暖かさに気持ち良くなって寝てしまったのだろう。
春香は涼に捕まっていた。
涼が春香を後ろから抱き締めるような格好だった。
動こうとすると涼が起きてしまいそうなのでそれはやらないようだ。
こういう優しい性格はどちらに似たのだろう。
綾「ふふ、気持ち良さそうに寝てるわね」
春「おかあさん、動けないです…」
春香はここから出たそうにしている。
綾「じゃあ、お母さんと代わる?」
春「はい」
綾はまず涼の片手を持って、ゆっくりと持ち上げる。
続けてもう片方の手も。
綾「もう動いていいわよ」
春香が涼の手をくぐるように出る。
そして、今度は綾が涼の手をくぐるようにして入る。
今度は綾が春香の代わりになった。
綾「春香、遊んできてもいいわよ」
春「おかあさんは?」
綾「大丈夫。お父さんと一緒にいるから」
春「わかりました」
春香がてててっとその場から離れる。
この場には2人しかいない。
綾は改めて涼を見る。
気持ち良さそうに寝ている。
綾はふふっと笑い、涼の顔に近付く。
いつも涼からしているが、たまには私からの方がいいだろう。
綾「おやすみなさい、涼さん」
そう言って、そっとキスをした。