潤子「んんーっ…」
授業が終わってぐうっと背伸びをする。
綾と一緒に帰ろうかな。
そう思って声をかけようとしたが、すでに綾の姿は無い。
潤子「あれ?ねえ梨花、綾見かけなかった?」
梨「授業終わったらすぐに教室出てったわよ」
となるとどこへ行ったのだろう。
潤子「ん、わかった」
このまま一人寂しく帰るのもなんだし、綾を探すことにした。
潤子「……とはいうものの…どこへ行こうかしら」
ノープラン。
潤子「とりあえず、ちょっと身だしなみでも整えよっと」
すぐ傍の女子トイレに入った。
鏡を見ながらちょいちょいと髪型を整える。
これでよし。
潤子「……うん?」
ふと、奥の方から気配を感じた。
トイレなのだから人の気配がするのは当たり前だが、違和感を感じる。
トイレは3か所。
その一番奥からその違和感を感じ取れる。
本当は綾を探したいのだが、それよりもこちらの方が気になる。
理由はわからないけど、本能がそう言っている。
一番奥のトイレの前に立つ。
鍵がかかっているかどうか取っ手をつかんで軽く引く。
動く。
となると、ここには誰もいない事になる。
あの違和感は気のせいだったのだろうか。
そう思ったが、直後にそれは訂正される。
ほんの少しだけ開けたドアの隙間から、誰かがいるのが見えた。
誰だろう。
それに何故鍵をかけないのか。
誰が入っているのか気になった。
いつもなら『いるならいいや』と思うはずだが、今回だけは違う。
女の勘、とでも言うのだろうか。
ドアをもう少し開けた。
そこには綾がいた。
女の勘の正体はこれだった。
潤子「綾?」
綾「あ……しー…」
綾は口に指を当てて『静かにしてください』というジェスチャーを取る。
潤子「?」
何故静かにしなければならないのかわからなかったが、とりあえず静かにした。
とりあえずドアの前にいるのもなんなので綾のいるトイレの個室に入る。
一体どうしたのと聞こうとすると、隣から声が聞こえた。
『ん……ちゅ…』
『んん……ゃ……あ…』
謎は全て解けた。
隣の情事にビックリして施錠を忘れたのだ。
とりあえず静かにした方がいいと判断したので静かにしてほしいとジェスチャーをしたのだろう。
……まあ自分も百合なので動揺はない。
ただ、綾は真性の百合ではないので果てしなく動揺している。
というかこんな状況は初めてだろう。
………………。
2人きりの状態。
しかも外は淫靡な声で溢れている。
潤子「……………」
ぐいっと綾の腕をつかんでこちらに引き寄せ、ぎゅっと抱く。
そしていきなりキス。
綾「んっ……」
ちゅ、ちゅとわざと音を立ててキスをする。
隣と同じ事をしているという事実を綾にわからせるため。
綾「んん……はっ…あ…」
綾の口から甘い声が発せられる。
その声が自分の本能を刺激してくる。
右手を綾の胸元に移動させ、優しく触る。
綾「んんっ……」
びくっ、と綾が震える。
制服越しなので胸の大きさはあまりわからないが、手にすっぽり収まるぐらいの大きさ。
平均的な大きさというのはわからないが、小さいのは明確だった。
だが、小さければ小さいでかわいいと思う。
次にスカートの中をまさぐろうと思った直後、足を滑らせた。
転倒する程ではないが、バランスを取ろうとした時に壁に肘が当たって大きな音を立てた。
その直後、隣のトイレからバタバタと逃げるようにトイレから出ていく2人の足音がした。
……今度こそ2人きりになった。
………………悪い意味で。
しまった………。
隣がエロい事をしていた為につい。
正気を戻した綾は、真っ赤になり、瞳からうるうると涙がにじみ出ている。
綾「うう……潤子さん……ひどいです…」
……やってもうた!
潤子「ごっ、ごめんね!つ、つい…」
つい、というレベルではないし、うっかりというレベルでもない。
綾「こん…な……ところで…するなんて…」
潤子「だっ、だってね…その…隣の雰囲気がすごかっ………え?」
ふと、綾が口にした言葉を思い出し、反芻。
潤子「ね…ねえ…その……ちゃんとしたとこなら……良かったの?」
綾「え………」
図星だったらしく、一気に顔が真っ赤になる。
この流れを読んだ潤子はさらに攻める。
潤子「うんっ、学校終わったらしよ。ね、しよ?」
ゴリ押し。
100キロオーバーの相撲取りでも押し出されてしまいそうなぐらい。
綾「ぇ……あ…………あの………は…い…」
勝った。
えっちの約束と、この状況からの脱出という2つの意味で。