和「えーっ!?潤子さんと付き合うの!?」
綾「わ、和佳奈ちゃん…声が大きすぎ…」
和「あ、ごめんなさい」
和佳奈がびっくりするのも当然である。
たったいま潤子と付き合うのを知ったから。
和「いいなあ、私も喜久子先生と付き合いたいのに…」
綾「……」
綾と潤子は女同士というタブーだけ。
しかし、和佳奈と喜久子は女同士の上に教師と生徒という二重のタブーが存在する。
ただでさえタブー1つだけでも大変なのに2つとなると過酷になる。
綾「でも、校則によると異性交遊はダメだけど同姓なら大丈夫じゃないかな…」
和「…あれ、書いてたっけ?」
綾「……読みましょうね、生徒手帳」
ちなみに廊下での『ダッシュ』禁止、アフロヘ『ヤ』ーといった珍校則がどこかの学校に存在します。
和「……うんっ、決めた!先生に告白するっ!」
綾「本当!?」
和「うんっ、愛しの先生に愛の告白するのっ!」
綾「すごい張り切ってるね…」
和「本人の前で言えない分つい…」
これが空回りにならなければいいのだけれど。
綾はただそれだけが不安だった。
翌日の放課後。
職員室で喜久子が書類の整理をしている。
ふと、ひょこっと入口から和佳奈が見えているのに気づいた。
喜「あら、和佳奈さん。どうしたの?」
和「ん……喜久子先生はまだお仕事ですか?」
喜「ええ、もうちょっとで終わりますよ」
和「……喜久子先生ってすごいな」
喜「…私が…すごい?」
和「うん。だってテキパキと何でもこなすし綺麗だし…尊敬しちゃうな」
喜「あらあら、そんなに褒められると何かご褒美をあげたくなっちゃいますよ」
和「…ご褒美?」
喜「まあ、お金とかは無理ですけど何か欲しいモノとかはあります?」
和「ん……じゃあ喜久子先生!」
和「にゃっ、にゃんでもないですっ!」
勢い余って告白してしまい、大慌てで職員室から逃亡。
ぽつんと残される喜久子。
喜「……あらあら、かわいいわね」
和佳奈が喜久子に惚れている事はすでにわかっていた。
普通の生徒とは明らかに違う見方をしている。
好意を持った生徒とも違う、熱を帯びた視線。
喜「……どうしようかしら」
結論から言えば問題ナシ。
生徒と教師はタブーとされているが、実はこの高校の教師はかつて生徒だった頃に教師と付き合っていた人物がいるのである。
それは暗黙の領域と化し、『ぶっちゃけアリ』となっている。
喜「ふふ、私が好きと言ったらどんな顔をするのかしら」
和佳奈は相思相愛である事に気づかない。
叶わぬ恋とでも思っているのだろうか。
綾「ほら、和佳奈ちゃん…落ち着いて…」
和「だって…だってぇっ…」
すんすんと泣く和佳奈をなだめる綾。
綾「一応告白できたんだから、ね」
ホントに『一応』だ。