彼女が髪形を変える時

ブツッ。
涼「あっ!?」
髪を束ねていたリボンが小さい音と共に切れてしまった。
涼「うわー…遂に切れちゃったか」
綾「涼さん、どうしましたか?」
こちらの声に気づいたのか、綾が自分の部屋に来た。
涼「高校の頃の綾さんからもらったリボンが切れちゃって…」
長く愛用していたが遂にその役目を終えた。
綾「すごく長く使ってましたね」
涼「綾から初めてもらったプレゼントだったし、余計にね」
綾「代わりのリボン、用意しましょうか?」
涼「うん、頼むよ」
綾「少し待っていてくださいね」
そう言って綾は自分の部屋へ向かって行った。

しばらくすると綾が戻ってきた。
綾「お待たせしました」
いくつかリボンを手にしており、色も数種類あった。
綾「いくつか持ってきたので好きな色を選んでください」
涼「んー……どれにしようかな」
少し悩んだが青のリボンを手にして髪を束ねる。
これでよしと。
綾「残りのリボンは片づけてきますね」
ふと、試してみたい事が思い浮かんだ。
涼「あっ、ちょっと待って」
綾を呼び止める。
綾「えっ?」
涼「試しに、髪形変えてみない?」
そういえば綾が髪形を変えるのを見た事が無かった。
綾「私のをですか?」
涼「うん。綾が髪形を変えるのって見た事無いから」
綾「涼さんがよければ構いませんが…」
涼「じゃあ、まず最初はポニーテールで」
綾「わかりました」
綾は長い髪を後頭部の辺りまで持ち上げ、根本をリボンで結ぶ。
涼「おー……」
第一声はこれだった。
いつものストレートとは違うので新鮮に感じる。
凛々しさが出ている。
ポニーテールな綾もいいなあ。
ポニーテールを堪能し、次のヘアスタイルを考える。
涼「じゃあ次は、三つ編みのおさげで」
綾「わかりました」
涼「あと三つ編みは緩めでいいよ。きついと髪の毛に癖が出るから」
綾「緩めですね…」
綾は髪を二つに分け、編んでいく。
そしておさげの完成。
涼「おー……」
またしても第一声はコレ。
涼「古風だなあ…」
綾「涼さん、先程のポニーテールの方が歴史は古いんですよ?」
涼「えっ!そうなの!?」
おさげの方が古いと思っていたが、違ったのか。
綾「ポニーテールは総髪と言って男性は室町時代から総髪にしていて、おさげは大正時代からなんです」
涼「そうだったんだ…」
ポニーテールは文字通り横文字だから最近のヘアスタイルだと思っていた。
綾「次はどんな髪形にしましょうか?」
涼「そうだな……」
やってみてほしい髪形ツートップをやってもらって満足してしまった。
しかしこういう機会は意外と無いので色々と試してみたい。
やってほしい髪形……。
涼「………あっ、ツインテールは?」
そういえばこの髪形があった。
綾「ツインテール…ですか?」
涼「うん。綾がツインテールをしてるのって見た事が無いな」
綾「そういえば…ありませんね」
涼「じゃあ、お願いします」
何故か敬語になった。
後ろ髪の半分をリボンで束ね、もう片方も束ねる。
綾「色々と種類があるのですが、わかりやすいラビット・スタイルにしますね」
ツインテールにも色々種類があるのか。
ツインテールは奥が深い。
綾「初めての髪形ですが、どうでしょうか?」
綾のツインテール………。
涼「おお…可愛い」
綾は『美人』の要素が強いが、ツインテールによって幼い印象を付け、『可愛い』面がふんだんに出ている。
綾「そ、そうですか?」
あまり言われない誉め言葉のためか照れる綾。
色々リクエストして良かった。
……………。
涼「ねえ綾、その髪形でせいふ……」
綾「嫌です」
速攻で却下された。

後書き

久々に綾の小説です。
今回の話はプロットを考えずにPCに座ってから考えるというアドリブ方式で書いてみました。
脳内プロットはリボンを交換するところまでです。
大半、というか今までに書いた話は予め『起承転結』を考えてつなぎの所はアドリブで書いていましたが今回初めて違う方法でやってみました。
文法は根本的にショボイので変化はありませんが自分の心境としては割と書きやすかったですね。
『プロットを覚えている必要が無い』ので忘れっぽい自分としては非常に楽です(笑)。
ただ筆の進みが遅くなるのでにんともかんともな状態ですが。
ちなみにこの話で書いたツインテールですが『ツインテール協会』なんてなものがあるようです。
サイトもあるので見てみるとツインテールは奥が深いものだと認識させられました。
『聴きながら』シリーズは終わりましたが『〇〇時』シリーズはしばらく続けようと思います。
それでは次回にて。