彼女が制服に着替える時

涼「綾ー、コレどうする?」
綾「それは……捨てましょうか」
ごそごそと押入れの中を整理中。
そろそろ終わりを迎えようとする時に押入れの奥に大きな桐箱が見えた。
桐箱を押入れから取り出す。
涼「綾、コレ見覚えない?」
綾「…見覚えはないですね。お母さんのものでしょうか」
旧家のものをわざわざ我が家に持ってきているという事は何か意味があるという事か。
とりあえず開けてみるか。
蓋を開けると、中には服が入ってあった。
綾「まあ…!」
綾は服を見るなり驚きの声を上げる。
綾には何かの関係がある服のようだ。
涼「この服、知ってるの?」
綾「はい、これは私が以前通っていた高校の制服なんです」
そうか、綾は俺のいた高校に転校してきんだっけ。
制服を箱の中から取り出し、デザインを確認する。
マニアならブレザーの違いがわかるのだろうが、自分は素人なのでブレザーはブレザーという認識程度しかない。
ただ、それでもこの制服の特徴ははっきりとわかる。
ネクタイのように首元につけるのであろうリボンは一際大きく、この制服のチャームポイントなのだろう。
そして、靴下も特徴的だ。
白のオーバーニーソックスという他の高校にはない独創的なものがある。
……………………。
涼「綾、この制服き」
綾「着ません」
………さすが俺の嫁さん。
俺の言いたい事を見事に妨げた。
しかし俺だって綾の婿だ。
その気にさせる方法は熟知している。
涼「お願いします!」
速攻で土下座。
いい大人が土下座をするのは屈辱だろう。
しかし土下座だけで着てくれるのなら百回でもしよう。
綾「で…でも………今着れるかどうか………太ったかもしれないし…」
最後の部分は非常に小さい声だったが聞こえた。
ここでの返答が戦局を左右する。
綾「制服を着た可愛い綾を見たいです!」
『太ってない』と言ったら即終了だったであろう。
そして大事な事は可愛いとか褒める事だ。
それをゴリ押しで行けば、勝てる。
綾「………………い…一度だけですよ?」
勝った。
勝利の雄叫びを上げたいが我慢した。

『着替中は絶対に見ないでください!』と言われたので大人しく綾の部屋から出た。
着替え中を鑑賞できるというシチュエーションは叶わなかったが着替えはしてくれるのだ。
高望みはしない事が大事だ。
綾「…着替えました」
綾の言葉に胸が高まる。
自分の見た事の無い綾のかつての姿。
ドアを開け、部屋に入った。
そこにいたのは………。
涼「おお……!」
ちゃんと制服を着ていた綾だった。
制服はすでに見ていたので容姿は想像できていた。
しかし、実物は想像を超えていた。
可愛い。
この言葉しか出てこない。
このブレザーのコンセプトは『可愛い』を目指しているのがわかる。
涼「後ろは?後ろ向いて!」
正面の可愛さは把握できたので後ろが気になる。
綾「…はい」
綾は渋々後ろを向く。
涼「おお……!」
再び声が漏れる。
背面はこれといった目立ったものはなかった。
しかし、何も無い故に白のオーバーニーソックスが映えている。
そしてニーソックスとスカートの間の太腿が眩しい。
『絶対領域』というものに信仰的なものは自分には無い。
しかし今なら『絶対領域』にこだわる理由がわかる。
綾「もっ、もういいですか!?」
しかし綾にとってこの時間は恥辱以外の何物でもなかった。
眼福の時間は早々に終わりを迎える。
涼「んー…じゃあ最後に抱擁をお願いします」
綾「も、もう…最後ですからね」
『最後』というキーワードは便利なものだ。
ぎゅっと綾を抱き締める。
涼「昔を思い出すなあ。学生の頃の俺は綾と結婚できるとは思ってないんだろうな」
付き合いたいという気持ちはあったが、結婚の事までは考えてなかった。
ある意味若い。
綾「…私は……涼さんに出会えて本当に幸せです。だって、毎日幸せなんですから」
涼「うん、俺も」
もし、俺が綾の高校に転校していたらどうなっていたのだろう。
そんな未来ではなかったからどうなるかはわからない。
ただはっきりとわかる事がある。
その未来であっても、きっと俺は綾を好きになる。
それだけは、絶対の自信があった。

後書き

久々の復活なのにネタが弱いような気がします(汗)。
まあ今回のネタは『考えていたけどいつの間にか忘れていた』という酷いものですので…。
いかに作者のネタが枯れ果てているかお分りいただけたでしょうか。
…今後についてですが1年おきではなく『完全不定期』で綾の小説を書いていくスタイルとなります。
まあずっと書かないというわけではないし、『ネタができたら書く』という気まぐれな方向です。
当分の間、気まぐれな綾の小説に御付き合いください。
それでは次回にて。