KISS -10th-

トントン…。
首の辺りに指らしきものが当たった。
涼「………いい?」
情事の合図だ。
綾「………う、うん…」
はい、とは言えない。
どうしても恥ずかしいので『うん』と言ってしまう。
それに平気で『はい』と言ってしまったらはしたない女と思われてしまう。
……………というよりつつかれた時点で以前の情事を思い出してしまい、顔が熱くなってしまうため、どうしても『うん』になってしまう。

ここ最近はベッドでの行為が多い。
買ったから、というのもある。
布団よりも柔らかいため、布団にはない心地よさがある。
ふわふわとした感覚がたまらなく気持ち良く、よく眠れる。

すでに涼がベッドに入っていた。
こちらもベッドに入る。
綾「………涼さん」
だが、返事がない。
いつもだったら返事が返ってくるはず。
返事が行動で帰ってくる場合もあるが。
綾「涼さん…?」
ぽんぽんと背中を叩く。
しかし反応がない。
眠ってしまったのだろうか。
綾「涼さん」
やはり反応がない。
綾「…………………ふう」
溜息が出た。
本音で言えば、この情事は楽しみにしていた。
痛みはあるものの、心地が良かった。
愛されているという感覚が。
それがないことに、溜息を呼んだ。
ぽふ、と涼の背中に顔をうずめる。
綾「ねえ……私だって……………その………………いんですよ…」
最後の言葉辺りは口で言うのが恥ずかしくなり、聞こえないように愚痴をこぼす。
そもそも情事の約束をしたのに寝てしまってなしになったのは今回が初めてだ。
綾「涼さんだって……疲れているのは……わかります……………でも……」
涼「でも、何だい?」
綾「私だって………した………え?」
すでに目の前にいた。
綾「涼さ…んっ……ふっ…んぅ…」
濃厚なキス。
不満が一気に解消されるような程。
唇が離れる。
綾「その…………もしかして……」
涼「狸寝入り」
綾「そ……その………聞こえました?」
涼「聞こえたよ。全部」
トドメの『全部』という言葉で一気に真っ赤になる。
涼「『したい』というのも聞こえた」
綾「どうして………こんな事……」
涼「ちょっとね、綾の反応を知りたかった。けど、かわいそうだったから」
再びキス。
涼「じゃ……迷惑かけたから、たっぷりサービスするよ」

情事の後、軽く溜息をつく。
かわいい寝息を立てて寝ている綾を見て、
………ちょっとかわいそうだったかな。
放置プレイを試しにやってみたけど、これはちょっとなあ…。
というか俺自身が我慢できなくなったからな。
放置プレイは今回限りにしますか。
お互い損ばっかだし。
さて、と……。
すっと綾に近づく。
涼「ごめんね、お姫様」
そっと額に優しいキスをした。

後書き

うーん……(苦笑)。
ややシリアス、でもらぶらぶ。
KISSシリーズはとにかくキスとらぶらぶで勝負ですからね。
シリアスとほのぼのを交代でやっていくような感じです。
さて、とうとう二桁まで来ました。
11作目も出るでしょう。
それでは次回にて。